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須田良規プロ 特別書き下ろしコラム「雀立つ門(すずめたつもん)」
第十三之門 「暗刻牌と電子レンジ」(2010/07/23)
 家内が育児休暇を終えて仕事に復帰してからは、日中ずっと私が子供を見ている。
 大抵私が店に出勤するのは夕方以降であるから、それまでは子供と遊んだり、一緒に寝たりと専業主婦のような生活をしていた。
 隣近所には、リストラされた主人が渋々の自宅待機をしているようにも映ったかもしれないが、沢山の時間を子供と過ごせるのは幸福ではあった。
 主夫業、というのも悪くはないな。そんなことを思いながら、その日もいつものように家内が作ってくれた昼食を温め直そうとしていた。
 子供はベビーチェアーに座り、スプーンを片手にゴハンゴハンと催促している。惣菜をレンジに投げ込んで、その間に味噌汁をコンロにかけた。
 そのときふと、こんなことを思い出した。
 そういえば、小さい頃実家でよく母親に言われていた。まだ電子レンジの存在が物珍しかった時代、レンジは電気代がすごく掛かるからなるべく使わないように、と。
 確かに電気で調理をするという発想自体が当時は馴染みがない。直接ガスの火で温めるより、なんとなく大変な作業をしているような感覚になるのは理解できる。
 しかし、実際のところはどれくらいコストが掛かるものなのだろう。独り暮らしの時分なら気にも留めないような些細なことではあるが、“主夫”として少々気になったので、倹約のために調べてみることにした。
 レンジとガスと、どちらが得なのか。母の言う通説通り、電子レンジは電気代が甚大なのか。
 通説といえば、Maru-Janでもこんな局面があったのである。
牌譜ファイルはこちら
 東3局。ラス前南家にて、突然親の5巡目リーチを受ける。
八筒発東一索三萬  
私の手牌はこうである。
五萬二筒四筒四筒五筒二索四索四索六索九索九索九索白 ツモ
七索 
ドラ
白

 親リーチの一発目に絶対安牌の無いこの局面、何を切るべきだろうか。
 昔から、「暗刻の牌は危ない」なんて通説を聞く。確かに、自分が多く持っている牌は相手には入っていないわけだから、なんとなく理論的には正しいような気もする。
 しかし、昨今の麻雀研究の進化により、暗刻の牌が危険だというのは全くの迷信であることが分かってきている。麻雀の筋は18種もある。3枚程度自分が持っているからといって、その牌の筋が待ちになっているかどうかはほとんど関係ないのである。
 むしろ、違う無筋の牌を何種も切るくらいなら、同じ牌だけを3回切る方がよほど安全だ。端牌の暗刻なら、なお安全性は増す。というわけで、ここで切る牌は暗刻の九索が最も良い。3巡凌いでいるうちに、安牌も増えることが多い。
 もちろん、稀にこれが放銃の憂き目に遭うこともあろうが、トータルで見れば絶対に得をする。極端にいえば、安牌が無いときには暗刻持ちの牌を切ればよく、これは今までの通説として言われていたこととは、全く逆のことと言えよう。
 このときは九索の暗刻切りの後、増えてきた通りそうな牌を切っていった結果、このツモ和了り。
五萬六萬七萬四筒四筒二索三索四索四索赤五索六索七索七索 ツモ
四筒

 親のリーチは一筒四筒であった。普通に進めていれば、どこかで四筒を打つ場面もあったかもしれない。古い通説にとらわれず、戦術の損得を本質的に理解して自分のものにすること。これは麻雀に必要な資質のひとつであろう。
 さて、電子レンジのコストについて調べてみると、200gのホウレンソウを加熱調理した場合の違いを調べたサイトがあり、それによると掛かる費用はお湯で茹でた場合が5.3円、電子レンジを使った場合が1円と、約5倍の開きがあった。
 考えてみれば、まずガスの火で鍋を温め、それから間接的に鍋の中身を温めるコンロよりも、直接水分子を揺らして発熱させる電子レンジの方が確かに効率的ではある。
 また、レンジを使った方が必要な加熱時間も短く、ビタミンCの流出量も少ないために、レンジは率先して調理に活用する方がいいそうだ。
 大量に温めたりする場合はガスコンロの方が良いかもしれないが、1、2人分程度ならレンジの方が明らかに得らしい。
 科学的な研究の成果を知ることで、従来の先入観が覆ることは多々ある。
 子供が生まれてすぐの頃、粉ミルクを入れるのに保温ポットを使っていたが、これが便利な反面、すごい電気代を食うことを知って、今は押入れにしまい込んでいる。意外にも、その都度湯を沸かすほうが節約になるのである。
 自分の周囲に当たり前のようにある通説の真偽を知るには、科学的な根拠とそれを受け入れる柔軟性が必要だ。
 家族を持って生活していると、物事の本質にはずいぶん敏感になる。独り身なら愚鈍で良かったことが、そうも言っていられなくなるのだ。税金についても詳しくなるし、保険についても詳しくなる。先入観や通説に左右されないよう、自分で調べて、考えるようになる。
 惰性で独りで打っていたって、なかなかリーチに暗刻を切っていくことなど思いつかない。
 子供を保育園に預けるようになり、私は世話の忙しさから多少は開放された。最初は、朝離れるのをあんなに嫌がっていた子供も、今では保育園で皆と遊ぶのが楽しくて仕方がないようだ。
 独りで食事をするようになり、主夫の倹約について思いを巡らすことは少なくなってしまった。誰かがいるから、きちんと考えるのだと思う。
 孤独でいることは、老いを早める。この通説は、あながち間違いではないのだろう──
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