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須田良規プロ 特別書き下ろしコラム「雀立つ門(すずめたつもん)」
第六之門 「負けるもの何思う」(2009/03/27)

   先日、私が店に不在の折。新規の一見客が訪れて、結構長く打っていってくれたらしい。
   残念ながらその客は牌運に恵まれず、結構な負けを食らったようだ。それでも同卓したメンバーの話によれば、非常に感じのいい中年の男性で、盆面も大変良かったと。さっさっと負け分を支払って、今日は勉強になりましたと言って帰ったのだという。
   麻雀、負けが込む日は誰だってある。何を選んでも裏目、相手の当たり牌は常に自分のところに巡って来る。それが半荘1回ならともかく、10回も20回も続けば何かを呪いたくもなるだろう。その男性はまさしくそんな大敗の螺旋の最中にいたらしい。しかし彼は、負けてもそれを表情に出したり、麻雀を雑に打ったりは決してしなかったと。
   私は、その客がまた来てくれるのを心待ちにしていた。うちは繁華街から外れた所で細々と営業している小さな店だ。新規の、まして感じのいい客に巡り会えることは、とても貴重なのである。

    2月の初め、私もMaru-Janでずっと不調だった。もう半荘20回近く、トップが取れないでいた。
   いつも早いリーチが掛かり、防戦一方の局面が多かった。脇の放銃で局が進んでも、次局はその脇が満貫をツモ和了る。私は聴牌すら叶わずに、ただただ点棒を削られていった。たまにリーチに辿り着いても、愚形の追っかけを食らって一発で打ち込んだ。点棒を持ってオーラスに突入しても、満貫条件、跳満条件をいつも易々とクリアされ、捲られるばかりであった。
   しかし麻雀には、理不尽な結果というものは存在しない。全員が同じ条件下で打っている以上、どうしようもない巡り合わせの悪さも展開の悪戯も、全て確率の範疇の出来事である。だからこそ、自分の不ヅキを何かのせいにするのは、極めて自己中心的な行為だと訓戒している。
   不調のトンネルから抜け出すために、懸命に足掻くこと。これだって麻雀の醍醐味の一つと思えばいい。きっかけはどこに転がっているか分からないものなのだ。

   東3局の親番で、42000点持ちのダントツになった。流石に今回はこのまま行けるだろうとほくそ笑んでいた。ところが上家が流局直前に大物手をツモ和了って、オーラスには上家と38000点持ちの同点となった。このまま終了すれば、下家の私は2着の位置である。
牌譜ファイルはこちら
   また、トップが取れないんだろうなと思った。この展開は最近ずっとだ。弱気が私を蝕んでいた。
   配牌はこの通り。
二萬二萬三萬六萬八萬二筒八筒九筒一索二索四索四索七索   ドラ
三筒

   無論、何点であろうと和了らないとトップになれない。これが9巡目にしてやっとこの形になった。
二萬二萬二萬三萬四萬六萬八萬二筒三筒一索二索四索四索

   10巡目、上家が手の内から打七萬である。もう中盤、ここは食わないと間に合いそうもない。牌譜を見れば分かるが、七萬はもう3枚目、上家も好形のイーシャンテンである。
   チーして、打一索とする。
二萬二萬二萬三萬四萬二筒三筒二索四索四索   七萬六萬八萬

   そして次巡、五萬を引いてすぐ聴牌した。
二萬二萬二萬三萬四萬二筒三筒二索四索四索   七萬六萬八萬   ツモ
五萬
   二索切り聴牌だが、片和了りの四筒待ちである。下家の親は筒子気配だし、ちょっと和了れそうにない。筒子を重ねたらシャンポンに受け変えるだろうが、果たしてそれで間に合うか。だいたい先に一筒を引いたら──
   二索を切る瞬間、ふと考えた。一筒を引いても、和了れることはある──
   下家の親が二萬をツモ切った。
「カン!」
   思うより早く手が動いた。リンシャンにいたのは、まさしくその牌だった。
三萬四萬五萬二筒三筒四索四索   二萬二萬二萬二萬   七萬六萬八萬   ツモ
一筒

   自暴自棄の大明カンではない。空振っても和了りの制約は変わらないし、山に一筒があるの
なら、自分がその牌を引いた瞬間に和了りを宣言できる状況にしておくのは理に適っている。
   トンネルを抜けたな、とこのとき思った。麻雀の負けを何かのせいにするくらいなら、どうにかして自分で活路を見出すべきなのだ。

   後日店番をしているとき、1本の電話が鳴った。相手の名前を聞いて、私は胸が高鳴った。あの新規客だったのである。
「ああ、先日いらして頂いた方ですね──
   私は努めて明るく応対した。負けても盆面のいい、紳士の客。内心再びの来店を望んでいたのである。

「あのねえ、私この前そこで相当負けたんだけど。アンタら──イカサマやってたんじゃないだろうね。考えてみれば私があんなに負けるわけないんだ。多分アンタらが組んで、全自動卓に仕掛けをして、私から金を巻き上げたんだろう!!」
   怒号を飛ばすその男性に、愕然とする。
   負けても感じが良かったなんて表面だけで、内心は悔しさを噛み殺していたのである。そして自宅に帰ってあれこれ負けの原因を考えて、行き着いた考えがこの言いがかりであったのだ。
   何というか、ただ──、悲しくなった。
「そういう事実は一切ありません。もしそういう風にお考えでしたら、
今後は来店をご遠慮下さい──
   私は冷たく、そう言った。誰だって、負けて悔しい思いはする。それでもそれと向き合って、どう次につなげていくかが麻雀の大切な部分であろう。自分の負けをどこかに押し付けるくらいなら、麻雀なんてしない方がいい。

「どんなことをしても取り返してやるからな!がっかりしたよテメエの店には!」
   そう捨て台詞を吐いて、その客は電話を切る。
   がっかりしたのはこっちだよ、と溜息をついて、受話器を置いたのである──


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