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■Maru-Janトップマルジャンタレント > 須田良規プロ 特別書き下ろしコラム「雀立つ門」
須田良規プロ 特別書き下ろしコラム「雀立つ門(すずめたつもん)」
須田良規(すだよしき)
日本プロ麻雀協会
「東大を出たけれど」連載中
1~2巻以下続刊
(竹書房/近代麻雀)
東大を出たけれど
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第一之門 「哭く男、咎める女」(2008/10/31)

  普段メンバーをしている店で、ある日電話が掛かってきた。
「あのー、今開いてますか?新規で行きたいんですけど」
  中年男性の声だが、妙にまとわりつくような、丁寧な口調だった。
「ええ、やってますよ。是非お越し下さい」
  私がありきたりな営業文句を口にすると、電話の向こうで男が少しだけ迷った
様子を見せる。
  それから意を決したように男が発した言葉は、私が予想だにしないものであった。
「あのー、私、オカマなんですけどいいですか?」

  来店したその客は、遠目には分からないが、紛れもなく女装した中年男性だった。
青い頬をファンデーションで覆い、太い指には赤いマニキュアが鈍く光っていた。
  聞けば、最近この辺りに越して来たらしく、麻雀は好きなのだがこの風体で
歓迎されるかどうかが不安だったらしい。
  小さな店なので、見た目はどうあれ新規客が増えるのは有難いものだ。
常連も気の良い人たちばかりなので、割りと皆暖かく迎え入れてくれた。
  “彼女”の麻雀は至って普通だったが、東風戦はほとんど初めてらしく、
門前で腰が重い印象があった。
  そういうわけで彼女もよくリーチを掛けるのだが、私が食って捌いてばかりいる
もので、ちょっと彼女も閉口した様子で、
「よく鳴くわねえ」
と眉をしかめた。
  他人が見たら私の打ち方は、何も考えずポンチー仕掛けているように見える
のかもしれない。
  麻雀の基本は門前だと、古くから言われているが、私は門前も鳴きも同列に
考えている。どちらが良くてどちらが悪いということはない。それぞれ臨機応変に、
局面に合った行動をするべきだ。

  あるMaru-Janの1局である。⇒ 牌譜ファイルはこちら※1
  東2局、私は南家で、6巡目に早々イーシャンテンになる。
三萬四萬一筒三筒五筒六筒七筒八筒九筒九筒二索二索二索 北三筒
ドラ

  上家の親が激しく仕掛けてこの形。
裏牌裏牌裏牌裏牌裏牌裏牌裏牌 四索四索四索 九索九索九索九索

  親は序盤から字牌を切り飛ばして行っており、七索もツモ切っている。
混一というよりは対々の匂いが濃い。
  見えてない字牌はダブ東とドラの北であって、
これらで放銃するわけにはいかない。   中盤、手が動かぬままツモ東と来た。

三萬四萬一筒三筒五筒六筒七筒八筒九筒九筒二索二索二索 東 ツモ

  親は直前に三索を手出ししており、まだ聴牌かどうかは微妙なところである。
牌譜を見るとあまりに遠い仕掛けで面食らったが──
こちらとしても初見の相手を軽んじる理由はないので、
ここは東を押さえておいた。二筒が2枚見えているため、打一筒とする。

三萬四萬三筒五筒六筒七筒八筒九筒九筒二索二索二索東

  そこへ西家からリーチ。
九萬九萬發中一索三萬
三筒西四索

  ここだ。このリーチに対する親の動向は見逃せない。
親は少考して、手出しの一索。 まずノーテンである。
  私はリーチの一発目にツモ八萬

三萬四萬三筒五筒六筒七筒八筒九筒九筒二索二索二索東 八萬 ツモ

  まずは打東。リーチに当たる可能性もゼロではないが、
単純な数牌よりはよっぽど通る。   親も、東でロンならともかく、そうでないなら
叩いても怖くはない。対々ではリーチに勝ち目は薄いだろう。
  結局声は掛からず、私は次巡にまたツモ八萬

三萬四萬八萬三筒五筒六筒七筒八筒九筒九筒二索二索二索 八萬 ツモ

  西家の河に三筒があり、九筒を直前に親が通した。
追っかけリーチを前提にして打つなら打三筒だが、
食ってかわすことも考慮して打九筒
  果たして親が四筒を打ち下ろし、捌いて和了る。

三萬四萬八萬八萬六筒七筒八筒二索二索二索 四筒三筒五筒 二萬 ロン

  重ねた八萬は、リーチ者の当たり牌であった。最初の形で何も考えず東
ツモ切っていれば、西家のリーチを受けても目一杯のイーシャンテンをキープして
八萬で放銃していたかもしれない。
  都合よく八萬が重なることで、今度はクイタンでかわす道を得てそれに
沿ったのである。

「僕も、何も考えてないわけじゃないんですけどね──
  笑って小さな反論をしたが、彼女は
「男らしくないわ」
と首を振るばかりだった。
  あなたがそう言いますか──。苦笑して、その言葉は飲み込むしかなかったが。



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