〔棒テン即リーチ〕という言葉がありますが、テンパイしたら何でもリーチをかけるという意味に加え、創意工夫のないテンパイ一直線打法への戒めもこめられています。
第九打のコラムでも、そのあたりの話は触れましたが、今回も似たような意味合いで、近ごろ流行の〔棒仕掛け〕について、私の思うところを書いてみようと思います。
を5巡目にポンした南家は、次巡親から打たれた生牌の
をチー。何を切るのか見ていると
に手をかけ、手牌を7枚のイーシャンテンにしました。
そして10巡目に西家が切ったをポンしてテンパイを入れました。
ドラが2枚ありますから、3900点のテンパイなのですが、この仕掛け方に違和感を覚えない方も多いかもしれません。
もちろん、頭ごなしに否定するつもりは毛頭ありません。でも何かしっくりこないところがあります。
私は仕掛けには2パターンあると考えています。
ひとつめは〔速攻仕掛け〕
〔速攻〕と呼ぶからには、1巡でも早くアガり切る仕掛けをすることに主眼を置くもので、どの部分でフィニッシュさせるのか?打ち手の技量が試される仕掛けと言えます。
この〔速攻仕掛け〕の意味を勘違いしてしまうと、1巡でも早くテンパイさせればいいという考え方に陥ってしまいます。
この手牌を〔速攻仕掛け〕しようと思ったら、まず第一に考えるべきことは、フィニッシュ(テンパイ)になってはいけない部分はどこなのか?そこが〔速攻仕掛け〕の成否に直結します。
初歩の初歩なのでわかり易いと思いますが、この手牌では、ワンズのの部分さえフィニッシュにならなければ、〔速攻仕掛け〕は決まるはずです。
どうしてワンズのの部分がテンパイまで未処理になると〔速攻仕掛け〕が決まらないのか?
それは、カン待ちになるにせよ、ドラ表示牌のカン
待ちになるにせよ、他家から早めにこぼれてくるような牌では無いからです。
逆に待ちのリャンメンが残った仕掛け方はどうでしょう?
シュンツとして使い易いはともかく、端牌の
は他家から早めにこぼれてくる可能性の高い牌と言えるでしょう。
ですから役牌のから〔速攻仕掛け〕を入れたとき、残された手牌はこうなります。
この形からが出てきてもグッとこらえてチーは入れず、自力で
か
を引き入れるか、運良く上家から
か
をチー出来るまで待つことです。
勘違いし易いのは、上家からか
がチー出来ることを期待するくらいなら、先に
をチーしたって同じではないか。ましてや、テンパイさえ入れておけば、上家以外からでも
や
が打ち出されてくることだってあるはず…という考え方です。
本当にそうでしょうか?
をポンした後に
をチーすると、この2通りのテンパイになります。
上のケースは、をチーして打
、下のケースは、
をチーして打
となり、どちらかのカンチャン待ちを渋々選択しなければなりません。しかも
をチーした時の打牌によって、テンパイや残った形を読まれ易くもなります。
ところが、カンもしくはカン
からチー出来た場合は…
それぞれのテンパイ打牌が、や
となり、処理済みの打牌ゆえ、テンパイ部分が読まれにくくなります。
もう1度仕掛け前の手牌に戻します。
〔速攻仕掛け〕をしたいと思ったら、手牌全体を見渡し、テンパイになると時間がかかりそうな部分に着目することが大切です。
この手牌で言えば、ワンズの部分ですから、この部分から初動をかけてもいいくらいなのです。
つまりより先に上家から
や
が打ち出されたら、迷わずチーして
の後付け仕掛けに出るのです。
残された形は次のようになりますから…
こうなれば〔速攻仕掛け〕は決まったも同然なのです。
もう1度念押ししておきます。
〔速攻仕掛け〕とは、1巡でも早くアガり切るための仕掛けであり、打点は問わず、シンプルにアガることが主眼になります。
そのとき、勘違いしてはいけないこと、それは1巡でも早くテンパイさせる〔棒仕掛け〕の採用。思考の関与しない〔棒仕掛け〕の危険性を知ることです。
仕掛けの2パターン目は、〔打点系仕掛け〕です。
複数のドラや赤がある手牌、一色手牌などがその代表でしょうか。
この〔打点系仕掛け〕を敢行する際も、〔棒仕掛け〕は慎んだほうがいいのです。と言うより、〔速攻仕掛け〕時よりも慎重になったほうがいいと思います。
マンガンが見えているからと、この手牌からをチーして
を切ったとしましょうか。残された形はと言うと…
確かにこれでマンガンのイーシャンテンになりますが、カン、カン
、はたまた
や
のアンコのポンをクリアしていくのは大変な作業になります。
〔打点系仕掛け〕成就のコツは、一にも二にもその初動に尽きます。
そしてその大事な初動は、テンパイになって欲しくない部分から入れること、これが基本というか鉄則になります。
この手牌で言えば、カン部分、ここから初動をかけられれば、アガりがグッと近づくはずなのです。
ひとつ工夫するだけで和了確率が格段にアップするわけですから、2つ工夫すればアガったも同然の仕掛けになることを肝に銘じて〔打点系仕掛け〕にトライしてみてください。
まだまだお伝えしたいことはありますが、今回はこのあたりに留めておきます。
〔棒仕掛け〕が氾濫しているこの頃ではありますが、賢明なる丸雀ファンの皆さんであれば、私のアドバイスに耳を傾けていただけるのではないでしょうか。
さあ、今日から是非お試しあれ!