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TOP > コンテンツの一覧 > 土田浩翔プロ 特別書き下ろしコラム「14人の師」

土田浩翔プロ 特別書き下ろしコラム
14人の師

土田浩翔(つちだ こうしょう)
第11、22期鳳凰位・第22、23期十段位、第26期王位/他多数
著書「土田流麻雀 仕掛けを極める」
「最強麻雀土田システム」
「麻雀が強くなるトイツ理論」

第五十五打「キズは作らない」 2022/06/03


「なるべく<キズ>は作らずに打て!」

私が若かりしころ、尊敬する方(プロではありません)から事あるごとに教えていただいた貴重なお言葉です。

あれから40年、時代は昭和から平成、平成から令和へと移り変わり、プロたちの思想や思考も大きく変化しましたが、私の脳裏に残っているこの言葉は輝きを失っていません。

二萬二萬三萬四萬五萬六萬四筒四筒六筒三索五索赤五索六索七索ツモ六萬ドラ

東2局の親、6巡目の手牌です。

ドラと赤があり、5800は保証されている手牌ゆえ、六筒を切って完全イーシャンテン形にする選択が多数派を占めるはずです。

二萬二萬三萬四萬五萬六萬四筒四筒三索五索赤五索六索七索六萬ドラ

メンゼンで進めたい気持ちはあるものの、数巡経っても手牌が動かないこともあるので、二萬ポン、四筒ポン、四索チーはもちろんのこと、四萬七萬のチーまでも考慮しての喰いタン想定は、親として当然の措置。

いつの場合でも、メンゼンで進行できないことを想定して打っていくことは、プロならずとも打ち手の思考にはあるべきものという考え方は普通でしょう。

では六筒切りではなく、二萬切りという選択はどうなのでしょう?

二萬三萬四萬五萬六萬四筒四筒六筒三索五索赤五索六索七索六萬ドラ

マンズの3メン形を固定する打ち方になるわけですが、数巡経ったときの喰いタン策に二萬四筒がポンできないという不便さを感じる人は多いかもしれません。

手牌への安心感も六筒切りよりは減ってしまうはずです。

それでもメリットはあります。

その筆頭がツモ四索と来てくれたとき。

6巡目の河に二萬が切られていて、そこから何巡後かに四索が引けるわけですが、当然のことながら六筒を切ってのリーチとなります。

完全イーシャンテンで打ったときは二萬切りのリーチとなります。

3メン形だからツモれば同じだろうという考え方は一理ありますが、一萬四萬七萬待ちリーチで出アガりしやすい牌は言うまでもなく一萬です。

ツモだけに頼らず、ロンアガりへの期待感を残して打ったほうが和了率はぐんと上がるはずです。

となると、六筒切りリーチと二萬切りリーチでは、もっとも場に出てきやすい一萬での和了率が格段に違ってきます。

昭和の時代から、ソバテンリーチは日常的な光景として繰り広げられてきました。

それは打ち手が安心感に浸れる完全イーシャンテン形の成せるワザで、テンパイ効率の誘惑に抗えないからなのです。

もうひとつ、二萬先切りのメリットを。

二萬三萬四萬五萬六萬四筒四筒六筒三索五索赤五索六索七索    六萬ドラ

こう構えておいて、ツモ五筒と来たとき、打三索とすれば手牌はこうなります。

二萬三萬四萬五萬六萬四筒四筒五筒六筒五索赤五索六索七索    六萬ドラ

そしてこの変化に合わせてくれるかのように、四筒七筒五索八索から埋まってくれて一萬四萬七萬待ちのリーチが打てるなら…

リーチ表示牌は四筒五索ということになり、6巡目に手放した二萬が河で生きてきて、「親リーチに一萬は通るかも」という心理に子方はなるのではないでしょうか。

余禄としては、ツモ七筒でテンパイすると

二萬三萬四萬五萬六萬四筒四筒五筒六筒七筒赤五索六索七索    六萬ドラ

一萬での親満ロンアガりに加えて、ツモ七萬で8000オールという夢物語もあり得ないストーリーではなくなるのです。

二萬を抱えた完全イーシャンテン形は、その二萬が<キズ>になって和了率がダウンする可能性があることを承知したうえで、六筒切りを選択することです。

完全イーシャンテン形に構えると、アガりが近づいたような錯覚に陥りやすいのですが、リーチ表示牌がロンアガりを阻む<キズ>になるケースも多いので、臨機応変に考えていくことが大切です。

では次に仕掛け手を見てみましょう。

二萬二萬三萬四萬五萬六萬四筒四筒六筒一索三索東東    六萬ドラ

東2局の親の手牌です。

5巡目に東が出てきました。

もちろん「ポン」

当然のように完全イーシャンテン形に構えての打六筒

きわめて違和感のない進行に映るはずです。

すでに東を仕掛けたのですから、二萬四筒をポンしてもカン二索待ちにとれる形にしておくべきだという考え方です。

寸分のスキもない選択に見える六筒切りですが、<キズ>の残る仕掛けになりかねないので注意が必要です。

一萬四萬七萬の3メン形とカン二索という形、どちらから埋まりやすいかと訊かれたら、誰しも3メン形からと答えるはずです。

カン二索からチーできることだってありますし、自力で先に引いてくることだってあるでしょう。

そんなとき、二萬を手出ししてテンパイをとると六筒より二萬のほうが必要な牌だったんだと子方に知らせることになります。

赤が5であることを踏まえると、数牌の重要度は必然的に4〜6に集まります。

とりわけ1・2・8・9という端に寄った牌への重要度は、ドラが絡まないかぎりほとんど無く、仕掛け手の場合には、ポン材として活用される程度の重さです。

そんな基本的思考のなか、六筒より二萬が後から出てくる理由は何?と子方は考え始めるわけで

一萬一萬二萬からの二萬切り

二萬四萬四萬からの二萬切り

一萬二萬二萬からの二萬切り

二萬二萬四萬からの二萬切り

二萬四萬六萬からの二萬切り

二萬二萬三萬からの二萬切り

二萬三萬三萬からの二萬切り

この7パターンを想定します。

場況等の例外を除き、仕掛け手であることを踏まえれば

一萬一萬二萬

二萬四萬六萬

二萬二萬三萬

二萬三萬三萬

この4パターンに絞るはずです。

そしてこの4パターンのうち2つが一萬を危険牌であると示唆しています。

本来であれば気軽に打ち出されるはずの端牌一萬に子方の注意が向けられてしまうのです。

ですからダブ東を仕掛けたら二萬を切って<キズ>を残さずに打ったほうがいいのです。

二萬三萬四萬五萬六萬四筒四筒六筒一索三索東東東六萬ドラ

こうしておいて、赤五筒引きや七筒引きに備えておくと、手牌の幅も広がります。

いつの場合でも、カンチャン形はアテになりません。

上家以外の2人がパラパラと二索を切ってしまうことだってあります。

上家が切った二索をチーしようとしたら、ポンされてしまうことすらあります。

ですから六筒はアガるための保険の役割も担っているんです。

七筒を引いたら三索一索切りでターツをカンチャンからリャンメンに替えればいいのですが、五筒赤五筒を引いたときにはひと工夫が必要です。

二萬三萬四萬五萬六萬四筒四筒赤五筒六筒一索三索東東東六萬ドラ

ダブ東ドラ赤の親満イーシャンテン。

テンパイ効率で言えば四筒切りの一手。

一萬二萬三萬四萬五萬六萬七萬

一索二索三索

この10種どれを引いてきてもテンパイになります。

一索三索が重なれば文句なしの3メン形テンパイになりますし、カン二索がチーできても、二萬を切れば三萬六萬の待ちになりますから悪くありません。

それでもアガり易さという側面からは、三索切りを妙手としておすすめします。

えっ?と思われた方も多いでしょう。

三索を切ると手牌はこうなります。

二萬三萬四萬五萬六萬四筒四筒赤五筒六筒一索東東東六萬ドラ

テンパイする牌は

一萬四萬七萬

四筒七筒

一索

この6種類に減りますが、テンパイの落としどころとしては、ベストが二萬先切りで<キズ>を消した一萬四萬七萬なので四筒七筒がチーできるメリットは、カン二索のチーより魅力的です。

更に、一萬四萬七萬から先に埋まった場合、四筒七筒待ちと一索タンキ待ちのアガり易さを比較できるメリットがあります。

雀頭のないイーシャンテンに構える四筒切りは、一萬四萬七萬が埋まったときに打三索テンパイとなるため、ソバテンの一索は当然マークされるでしょう。

それに対して先に三索を切っておくと、埋まりやすい一萬四萬七萬から引けたときに、打四筒一索タンキ待ちとなるため、打三索一索タンキ待ちよりは、一索へのマークが薄まるため和了率がアップします。

ちょっとした手順の後先なのですが、ダブ東をポンしている親へのマークは思ったより厳しいものがありますから、効率よく打てば打つほどテンパイ形への<キズ>が残ることを覚えておいたほうがいいでしょう。

親番に限った話ではなく、メンゼンであれ仕掛けであれ、待ちになりそうなところへの<キズ>は作らないと心得るだけで、和了率がぐんとアップすることをお約束します。

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