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土田浩翔プロ 特別書き下ろしコラム
14人の師

土田浩翔(つちだ こうしょう)
第11、22期鳳凰位・第22、23期十段位、第26期王位/他多数
著書「土田流麻雀 仕掛けを極める」
「最強麻雀土田システム」
「麻雀が強くなるトイツ理論」

第十八打 「点と線」 2014/7/18

二萬四萬六萬八萬八萬四筒五筒四索赤五索六索七索発発 八索ドラ

南家が5巡目にこの手牌になりました。

6巡目の西をツモ切りした直後、上家の親が三萬を手出しすると、「チー」、六萬を切ってイーシャンテンに構える南家。

ほどなく発が出て「ポン」、打四索

八萬八萬四筒五筒赤五索六索七索発発発三萬二萬四萬

11巡目、北家がツモ切りした三筒で「ロン」

たった2千点のアガりでしたが、この南家、実は相当な強者なのです。

局面をもう少し補足しておきましょう。

東場は開局から荒れ模様で、西家のAさんが、リーチ・一発・ツモ・ドラ1・赤1・裏2のハネ満スタート。

次局は、親を迎えたBさんが、Aさんから早々にダブ東を仕掛け、赤とドラをうまく使い切っての4千オール。

その1本場、起家で親ッカブりしたCさんが、八萬ポン、四筒ポンと仕掛けを入れ、中盤過ぎにAさんが切った九萬で「ロン」

九萬九萬赤五筒五筒白白白四筒四筒四筒八萬八萬八萬

ドラは無いものの、赤と役牌入りのトイトイなので、マンガン手となりました。

東3局は、南家のDさんがピンフリーチをかけ、首尾よくツモり、裏が乗って1300・2600のアガりをモノにしました。

第2打に親のDさんが切った八萬を今度はチーしてきたのです。

更に、Aさんの切った北をポン。

6巡目を終わった時点のCさんの河は、このようになっていました。(ドラ一索

五筒六索四索二筒二索西

北北北八萬七萬九萬

マンズの一色手が濃厚でしたが、もしかするとドラ1を組み込んだチャンタ手も考えられる河に見えました。

8巡目、親のDさんが一萬を切ると、これも「ポン」、打牌は生牌の東でした。

さすがにここまで仕掛けられると、マンズのホンイチで、まだ河に顔を見せていない生牌の南中が危険牌候補の一番手のように思えました。

11巡目、意を決した北家のAさんがドラの一索を横に曲げてリーチ宣言すると、「ロン」の声。

声の主は、3フーロしているCさんでした。

七筒八筒九筒一索一萬一萬一萬北北北八萬七萬九萬

チャンタ・ドラ2の3900点。

そして冒頭の仕掛けが生まれる南1局を迎えることになるのです。

南入した時点での各家の持ち点を比べてみましょうか。

東家Cさん +900

南家Bさん +7700

西家Aさん ▲6800

北家Dさん ▲1800

このような状況で、トップ目に立っている南家Bさんの手牌をもう1度ご覧ください。

二萬四萬六萬八萬八萬四筒五筒四索赤五索六索七索発発八索ドラ

Bさんは強者の必要条件である《4メンツ1雀頭をツモの延長線上に作り上げる》技術を持っていましたし、トップ目の犯す《軽い仕掛け》への警戒感も人一倍ありました。

にもかかわらず、7巡目に上家のCさんが切ってきた三萬に間髪入れず「チー」の声をかけたのです。

本来であれば、次のような最終形を目指してメンゼンで打つはずのBさんが…

四萬五萬六萬八萬八萬四筒五筒六筒四索赤五索六索発発
四萬赤五萬六萬八萬八萬四筒五筒六筒四索赤五索六索七索八索
二萬三萬四萬八萬八萬四筒五筒六筒三索四索赤五索六索七索

理想の最高形を早々に断念してまで三萬に仕掛けを入れたBさんの真意とは?

それはやはり、開局にハネ満を親ッカブりし、東2局にBさんに親満を引かれ、アッという間に1万点も沈んだCさんが、仕掛け技を駆使して僅かではあるものの、南入の親番を迎えプラスの世界まで息を吹き返していたところにあったのです。

とくに、東ラスでのチャンタ仕掛けでのアガりに、Bさんは要警戒モードに入らざるを得なかったのです。

北北北八萬七萬九萬

そしてその時点での河は

五筒六索四索二筒二索西

この後、一萬をポンしての生牌の東を切って一索タンキのテンパイとしたわけですが、Cさんのアガり形をもう1度見てください。

七筒八筒九筒一索一萬一萬一萬北北北八萬七萬九萬

そうなんです。Cさんは5巡目に《テンパイとらず》の荒技を入れていたのです。

5巡目に生牌の東を切れば

一萬一萬七筒八筒九筒一索二索北北北八萬七萬九萬

このテンパイがとれていたのです。

でもCさんは《テンパイとらず》を選択しています。

それは何故か?

このペン三索テンパイをとって、2千点をアガるのを拒否したのではなく、Cさんは仕掛け始める前から、ドラの一索は複数使いしてアガろうと決めていたのです。

一般的には、そのような希望を持っていたとしても、『そんなにうまくいくわけではない』という常識論から、いったんペン三索のテンパイにとっておいてから、ドラ一索を引き込んでシャンポン待ちに替えたらいい、そう考えるのが普通です。

ところがCさんは違いました。

Cさんは、麻雀というゲームを《点》で打つことを良しとしないところがありました。

《点》と《点》をいくら繋げたところで、それは永遠に《線》にはならない。Cさんはそのあたりを強く意識する打ち手で、アガるときには、できるかぎり《線》になっていくようなアガり方を見つけようとしていました。

ですから、テンパイをとった後での手替わりや、テンパイしている手牌から一萬をポンして二索を手出しして一索タンキに待ち替えするような手順は拒否していたのです。

二萬三萬四萬九萬九萬一筒二筒三筒二索三索七索八索九索二筒ドラ

このままリーチをかける人は別として、手替わり待ちヤミテンをしているとき、一索四索が出てしまうと「ロン」とアガってしまうようなアガり方は、Cさんの『麻雀観』にはありませんでした。

これは冒頭の仕掛けを施したBさんにも当てはまっていて、一萬一索が複数山に眠っているとキャッチしている時などは、手中の四萬をも河に切り飛ばし、手牌をイーシャンテンに戻していることさえあるのです。

それほどまでに、BさんもCさんも、培ったキャリアの中で、《点》のアガりの脆さと、《線》のアガりの強さを体感してきたようなのです。

カン三萬のチーを入れた巡目の親Cさんの手牌はこの形でした。

赤五萬六萬七萬三筒四筒五筒六筒四索五索六索七索八索八索八索ドラ

そして恐ろしいことに、Bさんが三萬をチーした次順、Cさんが喰い下げられた牌は七筒でした。

《線》と《線》との死闘は、いつの時代にあっても、観る者を麻雀の深遠にいざなってくれます。

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