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土田浩翔プロ 特別書き下ろしコラム
14人の師

土田浩翔(つちだ こうしょう)
第11、22期鳳凰位・第22、23期十段位、第26期王位/他多数
著書「土田流麻雀 仕掛けを極める」
「最強麻雀土田システム」
「麻雀が強くなるトイツ理論」

第十二打「シャンテン戻しの滋味」2013/11/5

配牌を取ってテンパイに至るまで、多くの場合、4シャンテンあたりから、3→2→1とシャンテン数が減って、テンパイに辿り着くことになります。

もちろん、配牌2シャンテンや1シャンテンの好機が訪れることもありますし、時にはダブルリーチをかけられる愉快な手牌がやってくることもあります。

打ち手の習性と申しましょうか、与えられた手牌をできるかぎり早くテンパイさせ、最前線で戦える態勢を整えるため、シャンテン数を減らしていくことに全神経を注ぐシーンが多発します。

でも…私は思います。

「マージャンって、シャンテン数を減らしていくゲームなのかな?」と。

またまたおかしな事を言い始めてるゾ…と思われた方もたくさんいらっしゃるでしょうから、次の手牌をご覧になっていただいて、私の言わんとするところのサワリを感じてみてください。

三萬四萬四萬赤五萬六萬三筒四筒六筒七筒三索五索中中 八筒ツモ 五筒ドラ

四萬を切れば345の三色、三索五索を切ってリャンメン・リャンメンの1シャンテンになる手牌です。

東2局の親、5巡目という局面での1打を考えるとき、多くの打ち手は2シャンテンから1シャンテンに手牌を進行させる選択を支持するはずです。

理由(1) 親だから

理由(2) 好形の1シャンテンになる

理由(3) 赤が入っていて打点的魅力がある

理由(4) 先制リーチが打てそう

理由(5) 2シャンテンに戻す理由が無い

まだ他にもあるかもしれませんが、1シャンテンに進行させる理由を探せば、こんなところでしょうし、そもそも何の違和感を持たないのが普通の感覚だと思います。

中

こうすると手牌は1シャンテンに進まず、2シャンテンに戻ってしまいます。

次に何を引いてもリーチが打てなくなる後退感は、打ち手を不安の渦に巻き込んでいくはずです。

でも私はこう考えます。

思考(1) まだ始まったばかりの東2局じゃないか、あわててテンパイに向かう必要性は無い

思考(2) この手牌、もしかしたらとてつもない最終形に向かっているのかも

思考(3) 親で連荘することより、自分の可能性へのチャレンジを優先したい

思考(4) まだ始まったばかりだから、アガり逃しをしても挽回できる

思考(5) マージャンはアガることだけが目的ではなく、育てていくことが大切

こんなことを考えながら中を切り、手牌は2シャンテンに戻るものの、ツモのリズムに乗っていければ、次のような最終形もあながち夢ではないと思うのです。

三萬四萬赤五萬六萬六萬三筒四筒五筒六筒七筒八筒三索五索
三萬四萬四萬赤五萬六萬三筒四筒五筒六筒七筒八筒赤五索五索
四萬四萬赤五萬六萬七萬三筒四筒六筒七筒八筒三索四索五索

中を切らないで1シャンテンに進行させた場合は、次のようなテンパイでの即リーチ策が現実となるでしょう。

二萬三萬四萬四萬赤五萬六萬三筒四筒六筒七筒八筒中中
三萬四萬四萬赤五萬六萬三筒四筒五筒六筒七筒八筒中中
三萬四萬赤五萬三筒四筒六筒七筒八筒三索四索五索中中

別段悪くない手牌に見えますが、私はこれらのリーチにはスパイスが効いてない、誰の口にも合わせて作っている料理にしか思えないところがあります。

それでは次の一品はどうでしょうか?

七萬八萬九萬七筒八筒一索一索七索九索九索白白白六筒ツモ八索ドラ

南2局南家、7巡目、9千点ほどプラスしてトップ目に立っています。

1シャンテンだった手牌に安めの六筒を引きテンパイになったわけですが、さて九索を切ってドラ待ちにするのか、七索を切ってアガり易そうなシャンポン待ちにするのか、考えどころになります。

場に一索九索もまだ顔を見せてない状況であれば、七索切りシャンポンリーチをかける打ち手も多いのではないでしょうか。

もちろん、リーチをかけた後にドラを引いてきてピンチを招くことに不安を覚えたり、元々ドラ待ちリーチが好きだったりという打ち手は、九索を横に曲げるのでしょう。

いずれにしても、1シャンテンから0シャンテンになる牌を引いてきたのだから、テンパイに取らない選択肢は無いと考えるのが普通です。

ましてや、今局を含め残り3局でゲームセットする場面でのトップ目ですから、加点して局数をひとつ減らすことが使命と考えるのが普通です。

そのようなことは十分理解したうえで、私はこう考えます。

思考(1) 何故、トップ目なのにド安めの六筒を引いてきたのか?その現実を素直に受け入れてよいものだろうか?

思考(2) 南場に入ってのトップ目には、トップ目にふさわしいエネルギーがあるはず

思考(3) このゲームをもって、マージャンと別れを告げるわけではない

思考(4) アガることも大切だが、チャンス手が来たら、アガれなくてもいいからチャレンジすることが大切

思考(5) ツモ六筒は、雀神が自分を試すために7巡目に置いた牌なのではないか

こんなことを考えながら、私は六筒をツモ切りし、手牌を1シャンテンから0シャンテン(テンパイ)に進行させることを自らの手で阻みます。

さすがにチャンタ三色が完成する九筒が場に4枚出ていたらツモ六筒を受け入れますが、その際は七索切りのヤミテンにします。

なぜなら、私の決め事のひとつとして、《安め引きにリーチ無し》というものがあることと、7巡目にして欲しい欲しい九筒が枯れてしまう状況から、迫りくる危機を感じているためです。

安めをツモ切りして、フリテンの高め引き直しを待つ打ち方は、東1・2局の序盤戦やトップ目に立っているときの常套手段です。

シャンテン数を減らさない打ち方プラス、フリテンをわざわざ作るわけですから、危険極まりない選択に見えるでしょうが、もしアガりまで結びつけられたとしたら、かなりスパイスの効いた一品に仕上がることは間違いありません。

七萬八萬九萬七筒八筒一索一索七索八索九索白白白
七萬八萬九萬七筒八筒九筒一索一索七索九索白白白
七萬八萬九萬七筒八筒一索一索一索九索九索白白白

このいずれの最終形もリーチと踏み込み、最前線で思いっきり戦ってみたいものです。

また、3枚目や4枚目の九筒が上家から打たれたら、チーして打九索とし、ドラ待ちではあるものの、トップ目のエネルギーをフル活用した勝負し甲斐のあるテンパイにとります。

シャンテン数を減らすことばかりに精を出したり、1巡でも早くテンパイしたいという思いが強くなったりすると、《近視眼的なマージャン》になってしまいます。

もし、あなたが打っているときに、スケール感や手順の滋味を出してみたいなと思う局を見つけることができたなら、アガりに向かう精度を棄てる勇気を持たれてみてはいかがでしょうか。

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