
<仮テン>という行為は打ち手にとって和了までの通過点のような位置付けになるのでしょうが「もしかしたら・・・このままアガれるのかも・・・」という淡い期待が入り混じっていて、打ち手の意思が見えなくなる行為にも映ります。
即アガれる可能性を秘めているので否定する気にはなれませんが、少しだけ<仮テン>の数を減らしたほうが和了率はアップしていくはずなので、特に役無しの<仮テン>はとらないほうがいいと思っています。
東1局南家6巡目の手牌です。
ドラも赤も無い手牌ですから、打ち手は手替わりを待つために
を切って<仮テン>にとりました。
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が引ければピンフになると同時にリャンメン待ちリーチがかけられます。
また、
が引ければ自在な形に変化させることが出来ますし、ドラの
や![]()
引きという楽しみな手替わりもあります。
カン
待ちを平面的に考えると、カンチャン待ち4パターンの中では最もアガリ易い(ロンしやすい)待ちなので、そのままリーチをかけてもいいくらいの待ちです。
もしこれが開局の親のものであれば即リーチに踏み切る打ち手も多いかなと思います。
しかし、私は<仮テン>とらずの
切り。
手牌をこう構えておきます。
<仮テン>をとって手替わり待ちをするくらいなら手牌の幅を広げるイーシャンテン戻しのほうが面白くなるためです。
べつに三色かぶれではありませんが、
を手牌に残すことによって、![]()
の2種でもリャンメン形リーチが打てるので、
切り<仮テン>よりも和了に近づくのではないかなと考えています。
理想はもちろん
引きでのテンパイ。
ツモでハネマンに仕上がるリーチが打てるのです。
切り<仮テン>では、![]()
しか手牌に吸収できませんでしたが、
を切っておけば
含めすべての赤牌を収納できることになります。
もちろん、ドラ
引きでこうなると
選択肢がぐーんと広がり、マンズ・ソーズの3メン待ちリーチを期待しての
切りは言うに及ばず、三色がまだ狙えると踏めば、
を切っていく手法もあります。
すべてはその巡目における場況次第ということになりますが、
切りの<仮テン>策よりは数段手牌の幅が広がることは否めないでしょう。
麻雀は、ただアガればいいというものではなく、どうやってアガるのかという点に重きを置いたほうがいいゲームです。
アガれなかったら何にもならないからテンパイをとっておいたほうが得だろう、手替わりの保証もないしという考えに立つと<仮テン>をとりたくなるものですが『急がば回れ』の精神を忘れてはいけません。
では次の手牌はどうでしょう。
東4局東家5巡目、持ち点は+3000です。
<仮テン>はとりますか?
それとも即リーチをかけますか?
手牌はタンヤオなので、リーチをかけてツモって裏が乗れば4000オールですから、迷うような問題ではないだろう。
しかも親の「リーチ」は神の声と言われているほど子方にかかるプレッシャーは相当なものですから、早いリーチはかけ得だろう。
などなど即リーチ肯定派の理由にもそれなりの理があります。
<仮テン>派の言い分はこうでしょう。
そもそも待ちがドラそばの
になっているところが引っ掛かるし、ドラの
はもちろんのこと、
や
引きでも三色になるのだから、その変化を待ってからでもよいのではないか。
それに加えて、もし
が出てきてもロンと言えるのだから役無しの<仮テン>とはワケが違うだろう。
<仮テン>派にも十分な理があります。
『急がば回れ』
親であってもこの言葉は生きています。
アガリたい、連荘したい、子方を抑えこみたいという気持ちはよくわかりますが、その小さな欲を棄ててください。
<仮テン>とらずの
切り。
私はこの選択をオススメします。
を切ると手牌はこうなります。
はもちろん、![]()
での三色テンパイは<仮テン>をとったときと変わりませんが、
や
で3メン待ちリーチが打てますし、
や
でもリャンメンリーチが打てるという楽しみが増えます。
そして
や
引きでの打![]()
麻雀は多様な変化を楽しむゲームです。
更にはその多様な変化を利用して和了を生み出していくゲームです。
単なる数合わせ(絵合わせ)に終始するにはもったいないゲームです。
「今」見えている形と、「今は」見えていない形とを比較しながら納得いく和了に近づけていく選択をするゲームです。
理想のテンパイは
理想とはならなくても
切り<仮テン>をとらなければ
などなど、「ツモってやるぞ」と思えるようなリーチが打てるのですから、親で子方を抑えこみたい愚形でのテンパイどりは控えていったほうが進化しやすくなるはずです。
最後にもうひとつ例を挙げておきます。
南3局南家6巡目、持ち点+6000
は場に1枚切れです。
は生牌です。
トップ目の西家とは7000差
3番手の北家とは9000差という状況です。
次局はオーラスの親番ですから、リーチをかけて点差を詰めておく派がいて当然です。
<仮テン>をとっておいて、ピンズを早めに引けたり、
がポンできれば清一色に向かっていくけれど、3巡くらい待ってそんな状況にならなかったらリーチをかける派もいるはずです。
あとはもう<仮テン>とらずで![]()
外して清一色(もしくは混一色)一直線派。
6巡目でピンズが11枚ある手牌で、しかも連続形になっていますから
あたりを引ければ清一色成就は疑いようのないところです。
<仮テン>派は用心深いところと冒険したい狭間で揺れているようにも見えます。
少しの間は様子を見てという臨機応変なところは必要な要素なのですが、決断は早ければ早いほど成功しやすいゲームでもあります。
トップ目や3番手との距離を考えてしまうと、どうしても裏目をひく心配が先に立ってしまい<仮テン>をとる判断になるのですが、ここは即リーチかイーシャンテン戻しか、どちらかの決断をすべきときなのです。
麻雀には裏目は付きもの。
それを恐れてはいけません。
選択の連続のゲームですから、裏目は必ずついて回ります。
裏目どんとこい!という心持ちで打つことがとても大事なゲームでもあります。
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を外している最中に
が出て「ポン」、待ちは
タンキ。
この
が出れば2600、ツモれば700 1300ですから、喜んであがる人が多いのではないでしょうか。でも、果してそれでいいのか?
アガらないほうがいい局面も多々あることを忘れないで欲しいなと思います。
をポンできたときは、清一色でアタマの中は一色になったはずなのに・・・。
アガれるときでもアガらないほうがいい局面を知ることもみなさん自身の幅を広げることになります。
麻雀って奥が深いゲームですよね。