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土田浩翔プロ 特別書き下ろしコラム
14人の師

土田浩翔(つちだ こうしょう)
第11、22期鳳凰位・第22、23期十段位、第26期王位/他多数
著書「土田流麻雀 仕掛けを極める」
「最強麻雀土田システム」
「麻雀が強くなるトイツ理論」

第六十七打「<仮テン>を考える」 2025/11/05

<仮テン>という行為は打ち手にとって和了までの通過点のような位置付けになるのでしょうが「もしかしたら・・・このままアガれるのかも・・・」という淡い期待が入り混じっていて、打ち手の意思が見えなくなる行為にも映ります。

即アガれる可能性を秘めているので否定する気にはなれませんが、少しだけ<仮テン>の数を減らしたほうが和了率はアップしていくはずなので、特に役無しの<仮テン>はとらないほうがいいと思っています。

東1局南家6巡目の手牌です。

一萬三萬四萬五萬六萬九萬九萬一筒二筒三筒六筒四索五索六索 七索ドラ

ドラも赤も無い手牌ですから、打ち手は手替わりを待つために六筒を切って<仮テン>にとりました。

四萬五萬七萬が引ければピンフになると同時にリャンメン待ちリーチがかけられます。

また、九萬が引ければ自在な形に変化させることが出来ますし、ドラの七索赤五萬赤五索引きという楽しみな手替わりもあります。

カン二萬待ちを平面的に考えると、カンチャン待ち4パターンの中では最もアガリ易い(ロンしやすい)待ちなので、そのままリーチをかけてもいいくらいの待ちです。

もしこれが開局の親のものであれば即リーチに踏み切る打ち手も多いかなと思います。

しかし、私は<仮テン>とらずの一萬切り。

手牌をこう構えておきます。

三萬四萬五萬六萬九萬九萬一筒二筒三筒六筒四索五索六索 七索ドラ

<仮テン>をとって手替わり待ちをするくらいなら手牌の幅を広げるイーシャンテン戻しのほうが面白くなるためです。

べつに三色かぶれではありませんが、六筒を手牌に残すことによって、五筒七筒の2種でもリャンメン形リーチが打てるので、六筒切り<仮テン>よりも和了に近づくのではないかなと考えています。

理想はもちろん赤五筒引きでのテンパイ。

四萬五萬六萬九萬九萬一筒二筒三筒赤五筒六筒四索五索六索 七索ドラ

四筒ツモでハネマンに仕上がるリーチが打てるのです。

六筒切り<仮テン>では、赤五萬赤五索しか手牌に吸収できませんでしたが、一萬を切っておけば赤五筒含めすべての赤牌を収納できることになります。

もちろん、ドラ七索引きでこうなると

三萬四萬五萬六萬九萬九萬一筒二筒三筒六筒四索五索六索七索 七索ドラ

選択肢がぐーんと広がり、マンズ・ソーズの3メン待ちリーチを期待しての六筒切りは言うに及ばず、三色がまだ狙えると踏めば、三萬を切っていく手法もあります。

すべてはその巡目における場況次第ということになりますが、六筒切りの<仮テン>策よりは数段手牌の幅が広がることは否めないでしょう。

麻雀は、ただアガればいいというものではなく、どうやってアガるのかという点に重きを置いたほうがいいゲームです。

アガれなかったら何にもならないからテンパイをとっておいたほうが得だろう、手替わりの保証もないしという考えに立つと<仮テン>をとりたくなるものですが『急がば回れ』の精神を忘れてはいけません。

では次の手牌はどうでしょう。

東4局東家5巡目、持ち点は+3000です。

二萬四萬六萬七萬八萬三筒四筒五筒六筒三索三索四索五索六索 五萬ドラ

<仮テン>はとりますか?

それとも即リーチをかけますか?

手牌はタンヤオなので、リーチをかけてツモって裏が乗れば4000オールですから、迷うような問題ではないだろう。

しかも親の「リーチ」は神の声と言われているほど子方にかかるプレッシャーは相当なものですから、早いリーチはかけ得だろう。

などなど即リーチ肯定派の理由にもそれなりの理があります。

<仮テン>派の言い分はこうでしょう。

そもそも待ちがドラそばの三萬になっているところが引っ掛かるし、ドラの五萬はもちろんのこと、六萬九萬引きでも三色になるのだから、その変化を待ってからでもよいのではないか。

それに加えて、もし三萬が出てきてもロンと言えるのだから役無しの<仮テン>とはワケが違うだろう。

<仮テン>派にも十分な理があります。

『急がば回れ』

親であってもこの言葉は生きています。

アガリたい、連荘したい、子方を抑えこみたいという気持ちはよくわかりますが、その小さな欲を棄ててください。

<仮テン>とらずの二萬切り。

私はこの選択をオススメします。

二萬を切ると手牌はこうなります。

四萬六萬七萬八萬三筒四筒五筒六筒三索三索四索五索六索 五萬ドラ

五萬はもちろん、六萬九萬での三色テンパイは<仮テン>をとったときと変わりませんが、二筒七筒で3メン待ちリーチが打てますし、四筒五筒でもリャンメンリーチが打てるという楽しみが増えます。

そして四索七索引きでの打四萬

六萬七萬八萬三筒四筒五筒六筒三索三索四索四索五索六索 五萬ドラ
六萬七萬八萬三筒四筒五筒六筒三索三索四索五索六索七索

麻雀は多様な変化を楽しむゲームです。

更にはその多様な変化を利用して和了を生み出していくゲームです。

単なる数合わせ(絵合わせ)に終始するにはもったいないゲームです。

「今」見えている形と、「今は」見えていない形とを比較しながら納得いく和了に近づけていく選択をするゲームです。

理想のテンパイは

四萬赤五萬六萬七萬八萬四筒五筒六筒三索三索四索五索六索 五萬ドラ

理想とはならなくても三筒切り<仮テン>をとらなければ

六萬七萬八萬二筒三筒四筒五筒六筒三索三索四索五索六索 五萬ドラ
六萬七萬八萬三筒四筒五筒六筒七筒三索三索四索五索六索
六萬七萬八萬三筒四筒赤五筒五筒六筒三索三索四索五索六索
六萬七萬八萬三筒四筒四筒五筒六筒三索三索四索五索六索

などなど、「ツモってやるぞ」と思えるようなリーチが打てるのですから、親で子方を抑えこみたい愚形でのテンパイどりは控えていったほうが進化しやすくなるはずです。

最後にもうひとつ例を挙げておきます。

南3局南家6巡目、持ち点+6000

四萬五萬一筒一筒一筒二筒二筒三筒四筒四筒五筒五筒六筒西 七索ドラ

西は場に1枚切れです。

二筒は生牌です。

トップ目の西家とは7000差

3番手の北家とは9000差という状況です。

次局はオーラスの親番ですから、リーチをかけて点差を詰めておく派がいて当然です。

<仮テン>をとっておいて、ピンズを早めに引けたり、二筒がポンできれば清一色に向かっていくけれど、3巡くらい待ってそんな状況にならなかったらリーチをかける派もいるはずです。

あとはもう<仮テン>とらずで四萬五萬外して清一色(もしくは混一色)一直線派。

6巡目でピンズが11枚ある手牌で、しかも連続形になっていますから七筒あたりを引ければ清一色成就は疑いようのないところです。

<仮テン>派は用心深いところと冒険したい狭間で揺れているようにも見えます。

少しの間は様子を見てという臨機応変なところは必要な要素なのですが、決断は早ければ早いほど成功しやすいゲームでもあります。

トップ目や3番手との距離を考えてしまうと、どうしても裏目をひく心配が先に立ってしまい<仮テン>をとる判断になるのですが、ここは即リーチかイーシャンテン戻しか、どちらかの決断をすべきときなのです。

麻雀には裏目は付きもの。

それを恐れてはいけません。

選択の連続のゲームですから、裏目は必ずついて回ります。

裏目どんとこい!という心持ちで打つことがとても大事なゲームでもあります。

四萬五萬を外している最中に二筒が出て「ポン」、待ちは西タンキ。

この西が出れば2600、ツモれば700 1300ですから、喜んであがる人が多いのではないでしょうか。でも、果してそれでいいのか?

アガらないほうがいい局面も多々あることを忘れないで欲しいなと思います。

二筒をポンできたときは、清一色でアタマの中は一色になったはずなのに・・・。

アガれるときでもアガらないほうがいい局面を知ることもみなさん自身の幅を広げることになります。

麻雀って奥が深いゲームですよね。

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