かつて、デジタルとアナログの違いを表すとき、わかりやすかったのは時計だったでしょう。針があるアナログでは、秒針が進むにつれて分針も進んでいく様子から、時間というものはつながっているという印象を持つことでしょう。
一方、デジタル表示だと数字だけなので、たとえば5時22分という表示から23分に変わるまで、実際には1秒ずつ刻一刻進んでいても表示は同じで、1分間の変化の様子を表すことはないのです。
これを麻雀にあてはめると、実戦では1巡ごとに局面は変わっていく状況的なことをとりあえず度外視して、1断面を切り取ってその牌姿での最適解を出すのがデジタル的な考えの麻雀だと思います。
それに対し、そこから動いていく局面のことも考慮して答えを出そうとするのがアナログ的な考えの麻雀なのです。
私の考えでは、デジタル的なことは麻雀の基本であり、アナログ的に考えるのは応用問題。なので、デジタル的なことでは、はっきりとした正解のあることが多く、アナログ的な考えでは、経験則や先行きの話が多くなるのが当然だと思っています。
例をあげて説明していきましょう。
A図をご覧ください。
テンパイチャンスが最も広いイーシャンテンになるのは、打か打
です。
カンとリャンカンの
、
の受け入れですが、どれが入ったところでテンパイと言っても役なしのカンチャン待ちが残ります。
だから、もしこれが序盤の形であれば、イーシャンテンにはこだわらず切りとして、タンヤオやピンフ、あるいはソーズのイッツーを見てのリャンシャンテン戻しですが、残り少ない終盤であればテンパイチャンスを優先させて、デジタルに打ってイーシャンテンに手を進めるでしょう。
B図の場合でも、デジタル的には孤立している切りでしょうが、これがション牌のドラだと、ここで先のことを考えるのがアナログ的思考となります。
この手牌はまだリャンシャンテンなので、たとえドラが無事通過したとしてもテンパイやアガリには時間がかかりそうです。また、ここでが通ることによって、同様に
を抱えて困っていた他家を助けることになるかもしれません。ましてや、もしドラの
をポンされようものなら一気にピンチがやってくるのです。
こういった先のことまで考慮すると、ここではを切らず、ひとまず
を切ってタンヤオ狙い、あるいは
を切ってリャンメンを作ってピンフ狙いを残しながら今後のツモに委ねるといった打ち方もあるのです。何回かに1回は、残した
をツモってくることもあるのですから。
C図の場合はすでにイーシャンテンで、テンパイチャンスとしては余っている牌がなく、、
、
、
の受け入れがあります。だから、ここにツモってきた
は、デジタル的には完全な不要牌です。
しかし、ここでか
をツモってテンパイしたところで、役なしでリーチをかけてもリーチのみなのです。しかも、
は4枚使っており、他家への危険牌となる可能性も十分あります。
先にを切って安全牌になりやすい
を残すと、テンパイチャンスこそちょっと減るものの、ピンフが確定して456の三色チャンスもある形です。こんな場合は、
切りのほうが攻守兼用になる打牌であり、その考え方はアナログ的な時間軸も取り入れているからなのです。
つまり、瞬間の形による受け入れでは、デジタル的なことがわからないと損が多くなるものの、時間の幅(序盤なのか終盤なのか)や他家の動向など状況を考え合わせると、デジタルだけでは対応しきれず、アナログ的思考も必要になってくるのが麻雀なのだと思います。
第1問
南3局、ラス目の東家、14巡目にをツモって何を切るか。
切り。
連チャンが必要な状況の最後の親番で、終盤に入っているこの局面では、テンパイが最優先だ。この後は形式テンパイでも取りたいので、の受け入れをなくしても、ポン材の
を残したほうが実戦的。勿論、その牌が残っていることが前提となるが。
第2問
東2局、北家、3巡目にをツモってどう打つか。
切り。
すでにイーシャンテンで234や345の三色チャンスもある形なので、デジタル的にはイーシャンテンを維持して三色チャンスも残る切りになる。だが、その場合はピンフのみになる最終形も多くなる。まだ序盤ならば、
のトイツ落としで手を大きく伸ばす策もあり。タンヤオにして、しかもピンフや三色も狙えるリャンシャンテンに戻せるのも、序盤で先が長いからこそできることだ。
第3問
東3局南家、6巡目にドラのをツモって、何を切る?
切り。
ドラを重ねて一気にチャンスが広がった。ドラがなければピンズを伸ばすことも一策だったが、こうなればデジタルに瞬間のテンパイチャンスを優先して切り。これなら
のポンテンもできるし、
ツモなら役なしでも
のリャンメン待ちでリーチをかければいい。
第4問
東2局北家、5巡目にをツモって、何を切る?
切り。
345の三色が狙えそうだったが、三色が崩れるツモでイーシャンテンになった。テンパイチャンスは
切りが広いが、
ツモでは役なし、ドラなしのテンパイ。それならば、
の受け入れを拒否する
切りで
を残し、ソーズが伸びてイーペーコーが狙えるようになったら、
のトイツ落としでピンフに移行できるようにする。状況によっては
のポンテンで早いアガリも狙える。