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土田浩翔プロ 特別書き下ろしコラム
14人の師

(つちだ こうしょう)
土田浩翔 第11、22期鳳凰位・第22、23期十段位、第26期王位/他多数
著書「土田流麻雀 仕掛けを極める」
「最強麻雀土田システム」
「麻雀が強くなるトイツ理論」

第二十打 「ツモってもアガらない」 2014/11/4

一萬一萬七萬八萬一筒二筒三筒七筒八筒九筒七索八索九索五索ドラ

東4局親の手牌です。

ヤミテンで18000点の超大物手。打ち手は心の中で「早く九萬よ出てくれ!」と祈っていました。

九萬は早々に南家と西家が切っていて、北家もごく普通の河だったので、ポロリと九萬が出される公算が高かったことも、祈る気持ちを強く後押ししてくれていました。

8巡目にテンパイした打ち手は、1巡1巡、息を殺して歓喜の瞬間を待ちわびていました。

12巡目。ツモ六萬

何という不運。よりによってピンフ・ツモの700オールしか貰えない六萬をツモってくるなんて。

打ち手は逡巡したものの、そんな運命は受け入れることは出来ないと、ツモってきた六萬をそのまま河に並べると同時に横に曲げ、「リーチ!」を宣言していました。

そう、打ち手は8000オール確定のフリテンリーチという選択肢をチョイスしたのです。

ルール上、[完先マージャン]などでは、フリテンリーチ禁止となっていて、かけてしまうとチョンボとなるケースもあります。

ただ、現代マージャンの主流を形成するネットやモバイル、更にはフリーや競技、健康マージャンにおいては、フリテンリーチが認められています。

この[伝家の宝刀]をいつ抜くのかという要素も、マージャンの魅力のひとつとして受け入れられているように見えます。

とくに、純チャン・ピンフ・三色という、高目と安目の落差が大きい手役にとっては、究極の救済措置としてフリテンリーチが存在しているように思えます。

『連荘さえ続けていれば、そのうちいいことあるさ』と考え、六萬ツモの700オールを素直に受け入れる人もいるでしょう。

でも、私の長い長いキャリアの中で、この六萬をツモアガりした記憶がありません。

「残りツモが無い18巡目だったらツモアガりしますよね?」とクエスチョンされることもありますが、私は「いえ、それでもツモらずに、危険牌でなければ六萬をそのままツモ切りしますし、危険牌であれば他の安全牌を切ります」と答えます。

つまり、高得点が欲しくてド安目の六萬は受け入れられないという側面はあるものの、せっかく完成した美しいテンパイを壊したくないという想いの強さが、もうツモも無い最終巡になってもアガりを拒否する理由になっているのです。

次の手牌はどうでしょう。

一萬一萬一萬二筒三筒三筒三筒四筒五筒六筒七筒三索五索四索ツモ五索ドラ

東2局西家の手牌です。

ドラ表示牌待ちのままではリーチもかけづらかった西家が8巡目にツモってきた牌は、なんとアガり牌の四索

「ツモ!700・1300」とツモアガる西家を見て、『あら、もったいない』と思う私。

麻雀は自由なゲームです。

打ち手の希望や想いの強さによって、いかなる形にも変化させられるゲームです。

アガり牌が出たらロンする、引いてきたらツモする義務はどこにもありません。

だからと言って、ワガママで一人よがりな麻雀は〈場壊し〉となり、対局相手に迷惑がかかりますから、自由には責任が伴うことも忘れてはいけません。

手牌に話を戻しましょう。

ピンズ部分にスポットライトを当てると、

二筒三筒三筒三筒四筒五筒六筒七筒

となり、この中から1枚切るとフリテンリーチが敢行できます。

二筒を切れば二筒五筒八筒四筒七筒待ちになります。

七筒を切れば、一筒四筒七筒二筒待ちになります。

4メン待ちより5メン待ちのほうがツモり易いわけではありません。

両者のダブり牌ではない部分、つまり、5メン待ちの五筒八筒より一筒、この比較をして、五筒八筒より一筒のほうが山に残っている状況もあることを念頭に置かなければならないのです。

と言っても、そんな状況はレアケースですから、通常のフリテンリーチは、二筒切りで問題ありません。

純チャン・ピンフ・三色の手牌と違い、得点の落差がさほど無いから、リスキーなフリテンリーチをかける意味合いは薄いのでは?と思った方もいるでしょう。

確かに、裏ドラが乗らなければ、四筒七筒をツモって1300・2600、二筒五筒八筒ツモなら1000・2000にしかならず、700・1300と比べて1300点しか得点に差がありません。

最初の手牌は、700オールと8000オールの差21900点もありましたから、フリテンリーチに踏み込める理由が明白でした。

この得点比較だけ考えると、どうしても、いくら多メン待ちになるとは言え、ツモアガりを拒否してフリテンリーチをかけるメリットは薄いように思えるでしょう。

何故か?

一発や裏ドラや赤牌の魅力もさることながら、やはり冒険の航海にでたいからなのです。

男子として生まれてきた以上、船乗りになりたいという夢はありました。

大海原の向こうに、目にしたこともない美しい風景が広がっているはず。幼い頃、海に連れていってもらった時はいつもそんなことを想いながら水平線を眺めていました。

嵐に巻き込まれ、沈没するかもしれないけれど、見果てぬ夢を追いかけて冒険の海に出る、そんな想いを乗せてのフリテンリーチなのです。

ドラ表示牌の四索がツモれてホッとするような場面は確かにありますが、それは東2局の物語ではないなと私は思っています。

最後に次の手牌はどうでしょうか?

一筒一筒二索二索五索五索六索六索九索九索東東南南ツモ中ドラ

南1局親の手牌です。

あれよあれよという間に七対子をテンパイしてしまい、生牌の南待ちはどうなのかな?と思う間もなく、5巡目にその南をツモってしまいました。

持ち点はプラス7千点。

ツモ南で1600オールの加点となり、1万点超えのトップ目に立っての連荘は、さぞかし気分のいいものになるでしょう。

恐らく多くの人が、この1600オールのツモアガりに違和感を抱くことはないはずです。

でも、私はツモらない選択をします。

麻雀は選択の連続です。

決めるのは全て自分。アガり牌をロンするのも自由、ツモるのも自由、そして肝心なことは、アガらないのも自由なのです。

キャリアを積むと、それなりに経験値も上がり、損得勘定もしっかりと出来てきます。ところが、残念ながらその分だけ冒険心も失われていきます。

初心者のころから初級クラスにかけて持ち合わせていた常識外れの向こう見ずな打ち方が影を潜めてしまうのです。

そのころは、アガり損なおうが、放銃しようが、ラスで終わろうが、自分の手牌だけ見つめて、実に楽しい時間を過ごしていたはずです。

でもキャリアを積むにつれ、これはダメ、これは損、これはおかしなこと、などと自分自身の法律を作って、どんどん自由や冒険心を失っているのではないでしょうか。

一筒一筒二索二索五索五索六索六索九索九索東東南南ツモ中ドラ

私は一筒を切り、メンホン七対子の旅に出ます。

こんなチャンスはめったにあるものではありません。

一筒をトイツ落とししている間に他家からリーチがかかるかもしれませんし、そのロン牌を引かされることだってあります。

それでもいいんです。

アガれなくたって、放銃したって、トップを取りそこなったっていいんです。

冒険の旅に出るチャンスが来ているのに、安全な処に身を置いて、その一歩が踏み出せない自分でいることのほうが苦痛ですから。

さて、今日はどんな冒険をしてみようかな。

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