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土田浩翔プロ 特別書き下ろしコラム
14人の師

(つちだ こうしょう)
土田浩翔 第11、22期鳳凰位・第22、23期十段位、第26期王位/他多数
著書「土田流麻雀 仕掛けを極める」
「最強麻雀土田システム」
「麻雀が強くなるトイツ理論」

第二十一打 「〈形式テンパイ〉取りに思う」 2014/12/10

〈形式テンパイ〉有りのルールは、一部のセット打ちを除いて、ネットであれリアルであれ、ごく当たり前の時代になっています。

その時代にあって、打ち手たちはそのルールをフルに活用すべく、日夜麻雀脳を鍛えているようで、終盤(13巡目以降)の攻防には目を見張る進歩があります。

〈場3千〉と言われるノーテン罰符は、1人ノーテンで3000点、2人ノーテンで1500点支払わなければならず、支払った相手との点差は、それぞれ4000点、3000点と広がってしまいます。

ノーテン・テンパイの差なんて…と悠長に構えていると、アッという間に子のマンガン分の差を広げられたりしますから、〈形式テンパイ〉取りを軽んじてはいけません。

ところが、味をしめると言いましょうか、この〈形式テンパイ〉取りに突っ走ってしまう打ち手も増えているようで、本来起こるであろう息の詰まる終盤の攻防をよそに、〈形式テンパイ〉欲しさに乱入してくるのはいかがなものでしょうか。

たとえば次の手牌。

一萬一萬二萬四萬五萬五萬七萬八萬九萬二筒三筒六筒六筒四索ドラ

マンズが高い場で、一萬四萬二萬五萬も安全牌とはいえない15巡目、上家の親が勝負してきた六萬をチーして五萬を切って「ロン」されたり、一筒をチーして二萬切って「ロン」されたりする光景を目にすると、〈形式テンパイ〉有りの弊害があるように思えてしまいます。

もちろん、〈形式テンパイ〉取りの巧者も存在していて、一筒をチーして六筒を切り、三萬を引き込んでマンズを1枚も切らずに粘り込める打ち手を見かけると、感嘆符を打ちたくなります。

では、すでにリーチがかかっているときの〈形式テンパイ〉取りはどうでしょう。

三萬赤五萬七萬九萬九萬二筒二筒三筒四筒五筒三索四索五索五索ドラ

リーチ後に六萬が通っていたので、残りツモ3回のところで九萬をトイメンが切ってきました。リーチ者は親でしたが、勇気をふるって「ポン」。

七萬を切れば三色・赤・ドラのテンパイになりますが七萬は無筋です。

こんなとき、ちょっとヒヨって六萬の筋牌である三萬を切って〈形式テンパイ〉を取ったりしてませんか?

もっと悪いパターンは、下家の親リーチ者がツモ切った九萬とか二筒をポンして打三萬と〈形式テンパイ〉取りしてしまう打ち手。

誰も仕掛けていない前提で、北家が親の切った牌をポンすると、ツモ回数が1回増えてしまいますし、何と言ってもハイテイが親に回る恐ろしい事態を演出しています。

三萬赤五萬七萬九萬九萬二筒二筒三筒四筒五筒三索四索五索五索ドラ

ここから親のリーチに向かって、終盤とはいえ、九萬二筒をポンして七萬を勝負するのであれば、親がハイテイで四萬を掴むチャンスが逆に生まれますから、納得のテンパイ取りということになります。

ところが、ただノーテン罰符を払いたくない、あるいは貰いたいだけの〈形式テンパイ〉取りで局面を悪化させる打ち方は、どうも納得がいきません。

終盤、とくにハイテイがどこに回るかの攻防では、リーチ者にハイテイがいく場合、自分がテンパイするわけでなくても、チー・ポンして何とかズラそうとする戦略を駆使する打ち手がいます。

でも、自分がテンパイになるのなら、リーチ者にハイテイが回ろうとも〈形式テンパイ〉取りを敢行してもいいようです。

なぜなら、自分がテンパイしていないときは、リーチ者にツモられる失点はできるかぎり下げたいからです。

そして、自分がテンパイできるということは、ノーテン罰符を払う側ではなく貰える側に回れるので、その差額がバカにならないと考えるようです。ですから、その〈形式テンパイ〉取りで、ハイテイでリーチ者がツモろうと、長い目で見れば〈得〉をするというソロバン勘定のようです。

長い目で見たときの〈損得勘定〉を持ち出して麻雀を打つ。私はまったくもって悪い打ち方ではないと思っています。

信頼できるデータを駆使して打つことも、それはそれで楽しいものだと思います。

元々、私は〈数〉の世界で遊ぶのが大好きな人間でしたから、〈レアケース〉を除外した〈数理〉を駆使して麻雀というゲームを解明してみたいと、ずっと思っていました。

でも…その考えは浅はかでした。

それは〈アマチュア〉にだけ許される世界で、〈プロ〉、とりわけ〈一流プロ〉には通用しない世界なのです。

それはどうしてか?

答えは〈一流プロ〉は絶えず〈レアケース〉と対峙しながら打っている存在だったから、〈数理〉がいとも簡単にハネ返されてしまったんです。

三萬四萬五萬六萬八萬八萬八萬二筒三筒五筒五筒五筒七筒六索ドラ

南1局の親番でこの手牌になったのが13巡目のこと。

同巡、西家からリーチがかかりました。

どこまで突っ張っていくのかな?とみていると、ブンブンと無筋を3つほど押しての16巡目、西家のツモ切り牌七萬に北家が合わせて七萬を打ってきました。

チーだろう、と思う間もなくツモ動作に入る親。そしてツモってきた八筒を手元にしまい、無筋の三萬をブンと切っていきました。

へぇ~、そんな打ち方があるんだ。私は感心を通り越して驚愕の域に入っていました。

結局、最終手番でもテンパイしませんでしたが、対局終了後、「どうして連荘できそうなチーテンをいれなかったんですか?」と訊いてみました。

するとその打ち手はこんな話を青二才の私にしてくれました。

「ドラも無いあの手牌、メンゼンでテンパイするならまだしも、いくら終盤とはいえチーテンを入れたら負けるんだよ」

「ハイテイがリーチ者に回るから、チーしなかったという意味ですか?」と私が食い下がると

「いや、そういうことじゃなくて。ハイテイをリーチ者に回して戦う局面も時にはあるけど、リーチが無かったらチーする牌じゃないから、それを喰ったら負けなんだよ」

わかったようなわからなかったような納得をしてその場から離れた私でしたが、30代の若造にはその言葉の真意を理解することは到底ムリな話でした。

三萬四萬四萬五萬二筒三筒九筒九筒一索二索三索四索四索一索ドラ

リーチがかかっていた15巡目、上家から出された一筒をチーして安全牌の九筒を打っていく打ち手を見るにつけ、若かりし頃に見たあのヒリヒリする麻雀が恋しくなります。

『プロなのに…』

『どうしてアマチュアと同じような発想で打ってるんだろう?』

『〈形式テンパイ〉取りに躍起になるプロの姿を見て、麻雀愛好者たちは喜ぶんだろうか?』

『プロは〈夢〉を売る仕事をすべきで、〈現実〉を見せちゃいけないのに…』

とか思ってしまうのは、私だけなのでしょうか。

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