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TOP > コンテンツの一覧 > 土田浩翔プロ 特別書き下ろしコラム「14人の師」

土田浩翔プロ 特別書き下ろしコラム
14人の師

土田浩翔(つちだ こうしょう)
第11、22期鳳凰位・第22、23期十段位、第26期王位/他多数
著書「土田流麻雀 仕掛けを極める」
「最強麻雀土田システム」
「麻雀が強くなるトイツ理論」

第二打「少数派でいるために」2010/11/11

アガりたい、どうにかして与えられた手牌をゴールまで持っていきたい、そんな思いが強い打ち手は世にゴマンといます。

しかも、ゴールに向かって一巡のムダも許さず、とにかく誰よりも早くテンパイさせてリーチをかける手順を探すことが、勝つための唯一の道と考えているのです。

でもなぁ………そんなふうに打っていると息が切れちゃうんじゃないかなぁ。どうしてそんなにアガリが欲しいのかなぁって思ってしまいます。

そりゃあ時にはシンプルにアガリを求めなければならない局もありますが、レアケースなんですよね、そういうのって。

息が切れちゃう経験って誰にでもあると思います。私なんかもエラソーなこと言ったり書いたりしてますが、その日の気分次第で、東場の始まりからチーポン、チーポンと騒ぎ立ててしまうゲームがあります。

気分屋のB型特有の自分しか見えてない打ち方なのですが、そんな日は大敗します。その敗因の多くは、前半に脚を使いすぎるところにあって、アガリはけっこうモノにするものの、後半にその貯金をすべて吐き出してしまうパターン。

一萬 一萬 七萬 八萬 八萬 二筒 二筒 三筒 西 西 北 中 中 一萬ドラ

たとえばこんな手牌がやってきて、4巡目に生牌の中が出て「ポン」、北を捨てた次巡に西も出てきて「ポン」、打二筒

一萬 一萬 七萬 八萬 八萬 二筒 三筒 西 西 西 中 中 中

南家だからチャンタ目の九萬一筒が来ればマンガンになりますが、あっさり四筒が入り八萬切り。8巡目に九萬が出てきて「ロン、3900」とまずは一歩リードします。

そして次局も親番で白をポンして10巡目に2900をGETと幸先よいスタートを切ったゲームに限って………後が続かないのです。

軽快に逃げているように見えて、直線に入るとバタリと脚が止まってしまう駄馬のような負け方をしてしまうんです。

その原因は?一にも二にも自分自身の可能性を否定してしまうところにあるのです。

4巡目に中をポンしなければ、自分のツモ筋に、6巡目に一萬、8巡目に二筒、10巡目に中があって

一萬 一萬 一萬 八萬 八萬 二筒 二筒 二筒 西 西 中 中 中

というテンパイを果たし、14巡目に八萬もツモ筋にあったかもしれないし、もっと簡単に6巡目に三筒があって

一萬 一萬 八萬 八萬 二筒 二筒 三筒 三筒 西 西 北 中 中

となり、10巡目に北がいてくれて、裏ドラを開けたら一筒がニヤリとめくれて、アッという間の倍満成就だったかもしれません。

もちろん、そんな美味しいハナシがいつも転がっているわけではありませんから、ツモってもツモってもムダヅモばかりという結果だったかもしれません。

でも、可能性を排除して、アガリという小さな到達点だけ目指した打ち方をすると、間違いなく後半に脚が上がってしまうのです。

前回でも書きましたが、次のゲームは無い人生最後の半荘のオーラス以外、アガリがゴールでは無いことを大前提にしておかなければ、マージャンは語れないのです。

私も語れるほどマージャンを知っているわけではありません。そしてマージャンを御せる打ち手などこの世に存在していないことも確かなのです。つまり『マージャンは人の上に存在し、人の下に存在しているものではない』ことを謙虚に受け止めるべきなのです。

ツキの満ち欠けが見える段階に入れば、その身分に合った打ち方が求められますが、何もまだわからない前半戦においては、とにかく自分の可能性にチャレンジすべきです。

誰よりも早くテンパイしたところで、そのテンパイが自身の可能性を否定するものならば、それは全く価値のないもので、アガってしまうとツキが落ちていくのです。

三萬 四萬 五萬 六萬 七萬 三筒 四筒 四筒 四筒 二索 三索 四索 五索 赤五索ツモ 五筒ドラ

東一局の親番で7巡目にこんな手になったとします。よほど特殊な事情がないかぎり、今までホイホイと三筒を横に曲げて4000オールをツモっていたアナタ!

この手は赤五索五索を入れ替えるだけ、テンパイをとるのは自殺行為に近いことを知った打ち手に明日からなりましょう。

もちろん、五索を打った後、二筒を引いてきたら、赤五索を横に曲げて「リーチ」と宣言することです。

三萬 四萬 五萬 六萬 七萬 二筒 三筒 四筒 四筒 四筒 二索 三索 四索

赤五索を温存したときのリーチ手牌は

三萬 四萬 五萬 六萬 七萬 二筒 三筒 四筒 四筒 四筒 三索 四索 赤五索

五萬八萬という安目でアガったらマンガンにならないし、裏ドラが1枚乗るだけで下の手牌はハネマンまで望めるじゃないか、という多数派にいては一生<勝ち組>に回ることはできません。

何故?

答えは簡単です。世の中を見ていればすぐにわかることじゃありませんか。

多数派である一般庶民が<勝ち組>でしょうか?周りの人たちが賛成するような打ち方をしていては一生<負け組>ですよ。

何より、マージャンの中心にあるのは、ドラでもなければ赤でもないことを胸に刻みつけておくことです。更に言えば、3メンチャンやリャンメン形が正しいと思うのはナンセンスなことであると認識することです。

<手役>の力は偉大です。自分のエネルギーを高めてくれる唯一の存在だと考えてもいいほどです。

ですから、海のものとも山のものともわからぬうちは、ツキを自分に引き寄せる方法として、アガれなくてもいいから<手役>が狙えるチャンスを逃さぬことです。

テンパイしなくてもいいんです。もっと言えば、自分の可能性を追い求める過程での放銃は、可能性を否定した和了より価値あるものと考えていいのです。

私は今年でマージャンを打ち始めてから45年目になりますが、この<真理>に気づいたのはほんの15年ほど前です。もっと早く気づいていれば、プロ人生も大きく変わっていたハズなのに………という後悔を味わって欲しくないので、このコラムを始めました。

ワケのわからぬこと、非常識・非効率なことを書き並べていくと思いますが、マージャンが大好きな皆さんに、<少数派>でいられる幸せを是非味わっていただきたいのです。

ただそれだけです。

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