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土田浩翔プロ 特別書き下ろしコラム
14人の師

土田浩翔(つちだ こうしょう)
第11、22期鳳凰位・第22、23期十段位、第26期王位/他多数
著書「土田流麻雀 仕掛けを極める」
「最強麻雀土田システム」
「麻雀が強くなるトイツ理論」

第五十八打「読みを外す手順」 2023/04/12


好むと好まざるとにかかわらず、打ち手は相手の河を見ながら選択していきます。

ましてや、仕掛け手やリーチとなれば、なんとか放銃しないようにと、河を読みながら、あるいは何かを感じながら選択していくものです。

東2局、親からリーチが入りました。

親の河はこうなっています(ドラ七筒 中五筒はツモ切り)

北白中一萬三索五筒
七萬六索リーチ


このリーチを読む側に立てば

五筒のツモ切り

七萬の手出し

六索を手出ししてのリーチ

この3点に読みが働きます。

まずは五筒のツモ切りについて。

例外はありますが、序盤の心牌<5>切りの多くは、手牌に<23>や<78>があって、早めにテンパイしそうなので、<5>を手元に置いて<2345>や<5678>という四連形に期待しなくていいケースです。

つまり、この河で言えば、親の手牌に二筒三筒七筒八筒というリャンメン形が6巡目の時点で存在しているのではないか?という読みが働くのです。

そしてその読みから、ピンズで危険なスジは、一筒四筒六筒九筒ということになり、ドラが七筒ゆえ、六筒九筒は特に危険視していい待ちに浮上するのです。

次に七萬の手出しについて。

4巡目に一萬が切られているので、マンズは手出しされた七萬の周辺が必要だった可能性が高く、複合形で持っていたか、優れた孤立牌としてキープしていたかのどちらかで、後者のケースは、リーチの待ちに関連していないため、前者だけに絞って読みを働かさなければなりません。

考えられる形としては

A  六萬七萬七萬

B  七萬七萬八萬

C  五萬七萬七萬

D  五萬五萬七萬

E  七萬七萬九萬

F  七萬九萬九萬

G  六萬六萬七萬

H  七萬八萬八萬

I  五萬七萬

この9パターンのうち、DFGHは複合形が雀頭になるケースなので、七萬が孤立牌だったケース同様、読みの対象にはなりません。

Iは五萬七萬四萬を引いてリャンメン形になったケースなので、三萬六萬待ちは読みの対象になります。

Aは五萬八萬待ち、Bは六萬九萬待ち。

Cはカン六萬待ち、Eはカン八萬待ちになりますから、AやBのケースと待ちが被るため、危ない牌は、五萬六萬八萬九萬と読めるわけです。

Iのケースの三萬を加えれば、マンズの危険スジは3通りに絞れることになります。

最後にリーチ表示牌六索の手出しについて。

五筒七萬というシュンツ作りには欠かせない牌たちの後に出てくるということは、とても大切な牌だったということに他なりません。

ましてや親のリーチですから、寸分の隙なく手組みしていく段取りを想像すると、この六索は、とてつもなく重要な牌だったということになります。

考えられる形としては

A  五索六索六索

B  六索六索七索

C  四索六索六索

D  六索六索八索

E  四索四索六索

F  五索五索六索

G  六索七索七索

H  六索八索八索

I  二索四索六索

この9パターンのうち、Iは除外されます。

なぜなら、5巡目に三索を切っていますから、まさかフリテンカンチャンリーチとはしないでしょうから。

残りの8パターンのうち、EFGは、複合形が雀頭になったケースなので読みの対象にはなりません。

Hについては、八索を期待してのシャンポンリーチはよくあるケースなのでマークが必要になります。

このケースでは、リーチ後に五索が通っても安心して八索は切らないほうがいいでしょう。

Aは四索七索待ち、Bは五索八索待ち。

Cはカン五索待ち、Dはカン七索待ちになりますから、AやBのケースと待ちが被るため、危ない牌は、四索五索七索八索と読めるわけです。

すべてを整理すると

三萬五萬六萬八萬九萬

一筒四筒六筒九筒

四索五索七索八索

この13種類の牌たちが、親のリーチに当たる可能性が高いということになります。

基本的には、リーチ表示牌の周辺が一番危なくて、次にリーチの一手前に手出しされた牌の周辺が危ないので、この親のリーチに危険な色は、ソーズ→マンズ→ピンズの順になると考えます。

ただし、ドラ周りは決め打ちしやすいので、この局のようにドラが七筒の場合

五筒七筒八筒からの五筒切り

七筒八筒八筒からの八筒切り

などは序盤に切り出せる牌なので、いつだって読みの中心に据えておくことです。

そしてここからが今回のテーマである読みを外す話になります。

リーチを受けた8巡目の南家の手牌です。

三萬四萬五萬六萬九萬九萬七筒八筒一索一索二索三索四索 二萬ツモ 七筒ドラ

5巡目に親は三索を手出しし、その後五筒ツモ切り、七萬を手出しした後、六索を手出ししてリーチしてきたので、南家の読みとしては、三索は孤立牌の処理と考え、雀頭候補の一索九萬を比べると一索はロンされにくい牌のひとつだったため、一索の対子を落とそうとしたところ 

「ロン」

親の手牌が開けられたのです。

五萬六萬七萬一筒二筒三筒七筒八筒九筒二索三索南南 七筒ドラ

「えっ?六索の周りの牌が無い」

「えっ?手牌と無関係な六索がなぜ・・・?」

南家は茫然自失となってしまいました。

ここで親の巧妙な手順を再現しましょう。

配牌

一萬五萬七萬七萬二筒三筒七筒八筒二索三索三索南北白 七筒ドラ

1巡目       打北

2巡目 ツモ南 打白

3巡目 ツモ中 打中

4巡目 ツモ一筒 打一萬

5巡目 ツモ六索 打三索

6巡目 ツモ五筒 打五筒

7巡目 ツモ六萬 打七萬

8巡目 ツモ九筒 打六索 リーチ

この5巡目の三索切りについて再現してみましょうか。

五萬七萬七萬一筒二筒三筒七筒八筒二索三索三索南南 六索ツモ 七筒ドラ

手牌にあるトイツ牌はすべて生牌です。

親であることを踏まえれば、七萬三索南の暗刻にも備えたテンパイ効率重視で打つのが標準で、この六索はツモ切りする打ち手が多数派だと思われます。

ところがこの親は、もし一索四索待ちになった場合、早めに三索を切っておいたほうが一索を狙えるかなと考え、テンパイ効率には目を瞑ってこの5巡目の河に三索を見せておいたのです。

もちろん、六索五索七索がくっつけば、この段階で不安定形の五萬七萬七萬という複合形とリャンメン形を交換できるメリットもあったので、相手の読みを外す効果と一石二鳥の三索切りと相成ったのです。

7巡目、ここもポイントとなる選択です。

五萬七萬七萬一筒二筒三筒七筒八筒二索三索六索南南 六萬ツモ 七筒ドラ

親はイーシャンテンとなり七萬を切ったのですが、これは明らかに一索を引き出すためのひと工夫です。

七萬より六索のほうが重要だった、そう相手に読ませるための六索の引きつけです。

打点ということを考えれば、七萬にもう1枚六萬を引いて二索三索を放せば

五萬六萬六萬七萬七萬一筒二筒三筒七筒八筒九筒南南

五萬五萬六萬六萬七萬七萬一筒二筒三筒七筒八筒南南

こんなテンパイも想定できた手牌でしたが、一索四索待ちでリーチをかけられる効果を優先して、親は七萬を切ったのです。

もっとも、入り目の問題があって、六筒九筒から埋まらずに一索四索から埋まることも当然考えられ、親の読み外しも徒労に終わる公算もありましたが、親は2分の1の確率に賭けて六索をテンパイまで引っ張ったのです。

テンパイ効率ですとか、完全イーシャンテンですとか、とかくテンパイ優先の考え方がもてはやされていますが、私は<アガリ効率>を優先したほうが成績は安定すると思っています。

そのためには、相手の読みを外す河作りは欠かせないものと考えています。

もちろん、相手によって使い分けてもいいと思います。

読まずにガンガン攻めてくる相手には、テンパイ効率重視、複合形重視でいいでしょう。

ただ、読みを駆使する相手には、その読みを外していく手順と河作りが必要なのではないでしょうか。

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