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土田浩翔プロ 特別書き下ろしコラム
14人の師

土田浩翔(つちだ こうしょう)
第11、22期鳳凰位・第22、23期十段位、第26期王位/他多数
著書「土田流麻雀 仕掛けを極める」
「最強麻雀土田システム」
「麻雀が強くなるトイツ理論」

第五十九打「死の美学」 2023/07/06

ラス前やオーラスを迎えて大きくマイナスしているとき、あなたはどんなことを考えて配牌を取ってますか?

  • ○ なんとか3番手、あわよくば2番手に順位を上げるための算段をする
  • ○ 親に連荘されたら、更に沈んでしまうので、これ以上失点しないために何点でもいいからアガリにいく
  • ○ マンガン以上の高打点系の手を作りにいき、テンパイできないなら諦める
  • ○ もしオーラスに親番が残っているラス前ならば、アガれそうな手はアガリにいき、駄目そうなら早めにオリる
  • ○ まずは役満を狙い、それが無理なら、倍満→ハネ満と、少しずつ狙いを下げる

まだ他に考えがある人もいるでしょうが、代表的な考えを5つ挙げておきました。

私の考えかたは以下になります。

  • ☆ 状況が悪化しているときは、他家にチーやポンをされやすくなっているので、序盤(6巡目まで)に字牌は切り出さないようにしよう
  • ☆ 一見アガれそうな手が来ても、それは《騙し絵》みたいなものなので、アガリに向かっていく手順は踏まないようにしよう
  • ☆ 他家の誰かからリーチがかかっても困らないよう、序盤からそれぞれの安全牌をキープしておこう
  • ☆ 下家が仕掛けてきたら、自らの打牌で2フーロ目がされないようにしよう
  • ☆ ツモられての失点は配牌時から覚悟し、誰かがアガってゲームセットになるのを足掻かずに待とう
  • ☆ 終盤(13巡目以降)の誰かの打牌に合わせ打ちして下家にテンパイをとられることのないようにしよう

こんなところでしょうか。

マンガンツモで3着に浮上できる点差であっても、ラス前やオーラスまで、私自身の内容が悪かった場合には、自らへの戒めとして浮上しようとは考えません。

そんなこと言ってたら、成績に支障をきたしやすくなるだろうし、競技性に馴染まないある意味場に偏りが生じる可能性もあるのでは?という意見は理解できます。

それでも私は、ラスを受け入れることも打ち手としてとても大切な姿勢なのではないかと考えて打ってきました。

賛同して欲しいとは言いませんが、今回は私の長年培ってきた麻雀哲学にお付き合いいただけたら嬉しいかぎりです。

一萬二萬四萬赤五萬七萬三筒三筒四筒三索五索七索南白 九索ツモ 五索ドラ

南3局西家1巡目の手牌です。

赤五萬もドラ五索もある配牌。

持ち点はマイナス14000点。

3番手の親とは13000点の差、2番手の南家とは16000点の差のラス目にいます。

さて皆さんの第1打は?

ここでマンガンをツモっておけば、3番手の親と1000点差、2番手の南家とは6000点差でオーラスを迎えられます。

ハネ満をツモることが出来れば、3番手に浮上し、2番手の南家とも1000点差となるばかりか、トップ目にいる北家に12000点差に迫れるのです。

これらの点差を考えた場合、この配牌からリーチをかける想定としましては

Aプラン

二萬二萬三萬四萬赤五萬六萬七萬三筒四筒五筒三索四索五索 五索ドラ

Bプラン

三萬四萬赤五萬七萬八萬二筒三筒四筒三索三索五索六索七索 五索ドラ

Cプラン

四萬赤五萬六萬七萬七萬三筒四筒三索四索五索七索八索九索 五索ドラ

Dプラン

一萬二萬三萬四萬赤五萬六萬七萬九萬三筒三筒五索六索七索 五索ドラ

Eプラン

一萬二萬三萬四萬赤五萬二筒三筒四筒五索六索七索九索九索 五索ドラ

こんなところでしょうか。

これらのプランを想定したときの第1打は必然的に南白になるわけで、恐らく皆さんの中でも支持される方は多いのではないでしょうか。

翻って、私の第1打は三索です。

三索七索三筒七萬四萬四筒

序盤の河はこうなります。

7巡目以降は、下家の河に目を光らせながら、できるかぎりチーされない牌を探していく作業に入ります。

尖張牌の3や7は手牌の急所になりやすい牌ですから、できるかぎり早い巡目に処理しておきます。

自分だけ置いていかれたラス目で南3局を迎えたときの心構えとして、自分の切る牌がチー・ポンされぬように細心の注意を払いながら打っていこうと考えているのです。

赤五萬もドラ五索も含まれる配牌なのに、A~Eまでのプランを最初から放棄してしまうのはもったいないじゃないか、と言われてしまいそうですが、第1打から配慮して打っていかないと中盤以降手詰まりを起こす可能性が高くなってしまうのです。

よく見かける光景として、ラス前やオーラスで10000点以上マイナスしているラス目の惨状をおさらいしておくと

  • 1 序盤に切った字牌がポンされる
  • 2 自分の不要牌が下家の必要牌になりやすい
  • 3 リーチがかかって今通った牌を切ると下家にチーされやすい
  • 4 終盤、手が詰まり気味になり、共通安全牌を後回しにして今通った牌を切ると下家にテンパイをとられる
  • 5 順位を上げるためにテンパイに向かうと相手のロン牌を掴みやすくなる

マイナス思考?

いいえ、そんなことはなくて、こういった光景は日常茶飯事起きています。

それがまた楽しいこと、と割り切って第1打に南白を選ぶのは打ち手の自由です。

ただ、私の麻雀哲学というか美学としては、ラス前やオーラスに至るまで、道中自分が蒔いた種でラス目にいるときは、手牌に溺れて更なる不始末をしたくない、そう考えて身をひこうと決めているのです。

もう1例挙げておきましょう。

オーラスの親、5巡目の手牌です。

持ち点はマイナス16000点のラス目で、3番手とは14000点離れています。

一萬二萬四萬四萬赤五萬七萬九萬九萬三筒五筒南西西 白ツモ 四筒ドラ

私はここから七萬を切り、次に四萬を切り、二萬を切っていきます。

場に出ていない南白は切りません。

三筒五筒も切りません。

なぜならドラが四筒なので、下家が二筒四筒と持っていたり、四筒六筒と持っていたりして、チーと言われるかもしれないからです。

状況を悪化させてオーラスを迎えているわけですから、<投了>を打牌で表現しようと考えているのです。

何を言ってるんだ。

ギリギリまで諦めず粘っていくのがプロとしての責務なのではないか。

そう責められることは覚悟のうえでの<投了>です。

プロであるならば、このオーラスの行く末を予測できないと言うのは恥ずべきことだと思っています。

もしかしたら・・・

あわよくば・・・

とりあえず・・・

などという御託を並べている暇はないと思っていて、このオーラス1局をもってゲームを終わらせます。

私の美学が正しいとはツユほども思っていませんが、私には私の生き様があるように、私の負け方があるに過ぎないのです。

ですから、この私の美学に賛同して欲しいと言っているのではなく、もし何かの機会に私の職務放棄のような打ち方を見かけたら、「ああ、アイツはあんなこと言ってたな」くらいの理解をしていただけたら嬉しいなと思うのです。

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