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土田浩翔プロ 特別書き下ろしコラム
14人の師

土田浩翔(つちだ こうしょう)
第11、22期鳳凰位・第22、23期十段位、第26期王位/他多数
著書「土田流麻雀 仕掛けを極める」
「最強麻雀土田システム」
「麻雀が強くなるトイツ理論」

第二十二打「オーラスの心情」 2015/03/04

オーラスを迎えたとき、何を考えて打てばいいのか?これは打ち手にとって避けては通れない命題ではないでしょうか。

え??そんなに難しい話ではないでしょ。だってオーラスを迎えたら、自分の持ち点と相手の持ち点の差を考えればいいだけの話でしょ。

なるほど、確かにその通りかもしれません。トップ目でオーラスを迎えたのであれば、2番手以下との点差を守りきる手立てを考えればいい。2番手で迎えたら、トップ逆転の手作りをするか、それが叶わぬなら、3番手以下との点差を守りきればいい。3番手で迎えたなら、ラスを引かぬことを第一義に考えるときもあれば、トップを狙いにいく勝負手を作ることもある。ラス目でオーラスを迎えたなら、もうそれ以上順位が落ちることはないので、ひとつでも順位が上がるような手立てを考えればいい。

と、ここまで書いてみて、この一般論に近い考え方が、どうも私の身体に馴染まず、違和感のカタマリのようなものが体内から分泌されてきています。

やっぱり私はアマノジャクなのかな。

オーラストップ目の西家が3巡目に次のような手牌になりました。

三萬四萬八萬九萬一筒一筒三筒七筒八筒四索五索七索九索二筒ツモ八筒ドラ

2番手の北家とは9千点、3番手の東家とは1万6千点、ラス目の南家とは3万5千点離れています。

さてカン二筒を引いたトップ目のあなたは何を切っていきますか?

普通に考えれば、2番手がマンガンをツモれば逆転されますし、親にもマンガンツモで並ばれる点差ですから、アガれるものなら1巡でも早く好形テンパイに持ち込むべきだという結論が導かれるはずです。

そしてその結論に従えば、カン二筒が引けて、リャンメン形が4ヵ所残るピンフの3シャンテン手牌になったわけですから、急所に映るワンズのペンチャンから外していく打ち方がトップ目の基本となるわけです。

もちろん、トップ目らしく赤五萬などが引けて、ススス~ッと次のようなテンパイになることも多々あるでしょう。

三萬四萬赤五萬一筒一筒一筒二筒三筒七筒八筒九筒四索五索八筒ドラ

首尾よく8巡目くらいでテンパイし、しっかりとヤミに構え、10巡目あたりにポロリと出てくる六索で「ロン、3900」というフィニッシュを迎えられるはずです。

なんら異論を挟む余地はありませんね。

でも『麻雀』ってそんなふうにトップ目が終わらせていくゲームなのかな?と思ってしまう私もいます。

安全に確実にトップを守りきる、あるいはアガりきるオーラスの打ち方に一石を投じてみたいのです。

もう1度手牌を戻してみましょう。

三萬四萬八萬九萬一筒一筒三筒七筒八筒四索五索七索九索二筒ツモ八筒ドラ

この二筒ツモが語りかけてくれる最終形が

七萬八萬九萬一筒一筒一筒二筒三筒七筒八筒七索八索九索八筒ドラ

あるいは

七萬八萬九萬一筒一筒二筒三筒四筒七筒八筒九筒七索九索八筒ドラ

こんなフィニッシュを描いて、カン二筒引きから五索四索外し、更には四萬三萬外しという豪胆な打ち方をして、初めて『麻雀』を打っているように感じてしまうのは私のエゴなのでしょうか。

このコラムを読まれているMaru-Janファンの皆さんから、毎回多くのお便りをいただいております。叱咤激励調のものや、夢を追っているだけじゃ勝てないだろ的な批評もいただいております。

十人十色の『麻雀観』に、思わず唸ってしまうことや、私の知らない考え方に触れて、たくさんの栄養を皆さんからいただくこともあり、毎回楽しみにしています。

私は、『麻雀』というゲームの偉大さを少しわかってきたこの頃(40代後半あたりからようやく1%~2%のカケラが見えてきました)、『数』に縛られ、『数』に怯え、『数』に追われていた自分が恥ずかしく思えるようになりました。

勝つ日もあれば負ける日もあります。

人間の力では御すことの出来ないこの偉大なるゲームとの向き合い方は、オーラスの処し方に凝縮されていると言っても過言ではありません。

持ち点はもちろん気になるところではありますが、その『数』を意識する前に、自分が出来ることは何か?、自分が出来ないことは何か?を考えること、それが『麻雀』を打つということなのです。

では次の手牌はどう考えますか?

二萬二萬三萬七萬九萬三筒赤五筒七筒四索五索九索九索発八萬ツモ八筒ドラ

オーラスの南家です。

南家はラス目で、3番手の東家とは1万9千点、2番手の北家とは2万6千点、トップ目とは3万5千点離れています。

5巡目にカン八萬を引き、ピンフ手のリャンシャンテンになりました。

発は生牌です。

番手を上げるには、東家からのハネ満直撃か、倍満ツモくらいしかありません。

こんなとき、二萬を打ってリャンシャンテンに構えたり、生牌の発を打ってリャンシャンテンに構える人もいますが、その先、つまりもう一手進んで、リャンシャンテンからイーシャンテンになった後、さてどうするのか?とても心配になります。

もちろんストレートに手を進めていって、こんなテンパイになるときもあります。

一萬二萬三萬七萬八萬九萬赤五筒六筒七筒四索五索九索九索八筒ドラ
一萬二萬三萬七萬八萬九萬三筒四筒赤五筒四索五索九索九索八筒ドラ

赤もあるのでリーチと出かけていくわけですが、その先に何があるのでしょうか?

アガりがあるかもしれないから、最後まで諦めずに打つという姿勢は感心しますが、違和感をもってしまう時もあります。

ではストレートに手を進めて、リャンメンから埋まってしまったらどうするのでしょう。

一萬二萬三萬七萬八萬九萬三筒赤五筒四索五索六索九索九索八筒ドラ

もっとも、多くの場合はテンパイまで辿り着かずに、他家の仕掛けやリーチを受けて、ギブアップとなったり、無理押しして放銃の憂き目に遭う、そんな結末が待ち受けているはずなのです。

ではどう打つのか?

私は九索二萬のトイツを外していき、10巡目あたりまでに安全牌化しそうな字牌をため込むことに専念します。

11巡目になったら

三萬七萬三筒赤五筒七筒七筒一索四索五索東西北発八筒ドラ

こんな手牌にしておきたいのです。

「なんだよ、早々に戦線離脱してオリるのかよ」とガッカリされそうですが、私は『麻雀』をそうやって打っていきたいのです。

オーラスは打ち手の『麻雀観』を表現する時間帯です。

勝っているとき、特にトップ目に立ってオーラスを迎えた時には、持ち合わせているエネルギーを最大限活かす打ち方をしたいなと思います。

負けているとき、特にラス目に置かれている時には、最大限の集中力を発揮して、他家3人の争いに水を差すような打牌は極力慎むように打ちたいと思います。

もちろん、チャンスがあるならば、そしてそのチャンスを活かせるエネルギーが残っているならば、諦めることはしません。

でも、『麻雀』を打つということは、単なる『数合わせゲーム』をすることではないという事だけは、忘れてはいけないと自分に強く言い聞かせています。

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