『4メンツ1雀頭をツモの延長線上に作り上げる』、つまり、メンゼンで仕上げて更にはツモアガること、それが打ち手の使命と考えている人は多いようです。
もしくは、3メンツまで精巧に作り上げ、フィニッシュとなる《テンパイ形》は他家からのロンアガリが十分期待できるものにし、和了数や和了確率をアップさせることに専心する打ち手も多いようです。
それはそれで、ひとつのマージャンの楽しみ方ではあるのですが、私はそういう《無機質》な打ち方はよほどの事情を抱えていないかぎり出来ません。
《無機》とは、本来は、生活機能を持たないという意ですが、比喩的に、『人間らしさや潤いに乏しい』という意に使われます。
CPU3台相手のマージャンであるならいざ知らず、3人の《人間》が相手のマージャンであるならば、やはり人間らしい潤いに満ちた打ち方をしたいなと思うのです。
シュンツであれコーツであれ、その時どきの自分に似合った組み合わせの仕方があると思いながら私は打っています。
ですから、似合わない組み合わせは、できるかぎり避けたり拒否したりしています。
たとえば次の手牌を見たとき・・・・・・・・・
大雑把な言いかたをしますが、私は自分の持つツキのエネルギーを〈アガリに向かうパワーとも言います〉、5段階に分けていて、《優》《良》《可》《否》《不可》という仕分けをしています。
ヨーイドンで始まった開局直後の2〜3局は、エネルギーの優劣がわからないため、楽観的に生きてきた私としましては、《優》かな?《良》かな?と思いながら打つようにしています。
なぜならば、悪いほうの裏目なら諦めもつきやすいのですが、良い結果を招いたはずの裏目だけは引きたくないなと思って打っているからです。
手牌に戻りましょう。
この手牌、東2局の6巡目、親のものだったことにしましょうか。
誰だって次のような最高形を描けます。
あと2枚、か
、
か
か
、
か
をうまく引いてくることができれば、描く最高形のテンパイでリーチが打てます。そしてそれらの牌たちは、よほど特殊な状況が生まれないかぎり、難しい引き方とも思えません。
そんな6巡目に、親がツモってきた牌は、嬉しいような嬉しくないようなペン。
打ち手の多くは、『そうか、タンピン三色はムリだったのね。ま、ピンフドラ1でもいいか』と、場を見渡してワンズ・ソーズの出具合から形勢判断し、どちらかのリャンメンターツを外し、ピンズの3メン形を残す打ち方をとるはずです。
伸び伸び打てて、自分の限りない可能性にチャレンジできる開局直後や、《優》や《良》の時間帯に『哀しい選択』をしてはいけません。
そんな『哀しい選択』で打牌の構えに入るアナタを、14枚の牌たちはどんな想いで見ているのか考えたことありますか?
イーシャンテンになったこの手牌から、を切ってリャンシャンテンに戻したこと、アナタはありますか?
『うん、あるある、オーラス近くなって、点差を考えてマンガン・ハネマンを狙わなきゃいけない時にネ』
じゃあ開局直後の親だったら?
『あるわけないでしょ。だって先制したいし、リャンシャンテンに戻したって、三色が決まる保証はないし、それより何より、アガリ逃しする手順になりやすいから、ピンフ・ドラ1リーチで十分だと思うよ』
この4パターンのどれかでのリーチで十分ということなのでしょう。
でも私はこの4パターンの手牌に組み込まれている【
】という組み合わせが、『哀しい組み合わせ』に見えて仕方ないんです。
手牌は南1局西家、5巡目のものです。西家は1万点ほどプラスのトップ目です。
好調者らしくカンをスッと引き込み、西家は一を河に置きました。
ピンフ・ドラ1のイーシャンテン。か
が入れば
と雀頭が振り替わり、更に打点が見込める手牌に変化する楽しみもあります。
4メンツ1雀頭を1巡でも早く完成させることだけに心血を注ぐ打ち方に徹するのも悪くありませんが、《風》を感じながら打つ時間帯があってもいいのになと、つい私は思ってしまいます。
欲を張れ!と言いたいのではなくて、すくすく育とうとする手牌を抑えつけるような打ち方は、手牌への《過保護》になり、牌たちがその抑えつけに怒って《反抗期》に入ってしまう心配をしているんです。
と
さえ手牌から外してあげられれば、
などという最終形に仕立てることも十分可能ですし、そのエネルギーが打ち手にはあるんです。
にもかかわらず、目先の利を追って、を切ってしまうと、
このようなテンパイが7巡目あたりまでに入って即リーチをかけ、恐らく良い待ちになっているのですぐにアガれるでしょう。
好調なので裏ドラが乗ってマンガン、トップ安泰となり、このゲームを制することになる確率はぐっと高まるのですが、アナタを冷静に見ている牌たちは、次局以降アナタの言うことを聞いてくれなくなるはずです。
自分の立場が、《否》や《不可》のとき、もしくは調子にカゲリが出てきたり、明らかに下降線を辿り始めている時間帯では、4メンツ1雀頭を《最速》で作りに行く打ち方に大賛成です。
でも、開局直後や《優》《良》の時間帯や《可》でも追い風が吹き始めている時は、『哀しい組み合わせ』を手牌の中に作らないように心がけてみてはいかがでしょう。
せっかく純チャン・三色・ドラ1(もしくはドラ3)というビッグウェーブが来ているのですから、たまたま5巡目にやってきたを《過保護》に受け入れることなく、【
】という『哀しい組み合わせ』から解放されてみるのも、たまにはいいかもしれませんよ!