配牌を取ってテンパイに至るまで、多くの場合、4シャンテンあたりから、3→2→1とシャンテン数が減って、テンパイに辿り着くことになります。
もちろん、配牌2シャンテンや1シャンテンの好機が訪れることもありますし、時にはダブルリーチをかけられる愉快な手牌がやってくることもあります。
打ち手の習性と申しましょうか、与えられた手牌をできるかぎり早くテンパイさせ、最前線で戦える態勢を整えるため、シャンテン数を減らしていくことに全神経を注ぐシーンが多発します。
でも…私は思います。
「マージャンって、シャンテン数を減らしていくゲームなのかな?」と。
またまたおかしな事を言い始めてるゾ…と思われた方もたくさんいらっしゃるでしょうから、次の手牌をご覧になっていただいて、私の言わんとするところのサワリを感じてみてください。
を切れば345の三色、やを切ってリャンメン・リャンメンの1シャンテンになる手牌です。
東2局の親、5巡目という局面での1打を考えるとき、多くの打ち手は2シャンテンから1シャンテンに手牌を進行させる選択を支持するはずです。
理由(1) 親だから
理由(2) 好形の1シャンテンになる
理由(3) 赤が入っていて打点的魅力がある
理由(4) 先制リーチが打てそう
理由(5) 2シャンテンに戻す理由が無い
まだ他にもあるかもしれませんが、1シャンテンに進行させる理由を探せば、こんなところでしょうし、そもそも何の違和感を持たないのが普通の感覚だと思います。
打。
こうすると手牌は1シャンテンに進まず、2シャンテンに戻ってしまいます。
次に何を引いてもリーチが打てなくなる後退感は、打ち手を不安の渦に巻き込んでいくはずです。
でも私はこう考えます。
思考(1) まだ始まったばかりの東2局じゃないか、あわててテンパイに向かう必要性は無い
思考(2) この手牌、もしかしたらとてつもない最終形に向かっているのかも
思考(3) 親で連荘することより、自分の可能性へのチャレンジを優先したい
思考(4) まだ始まったばかりだから、アガり逃しをしても挽回できる
思考(5) マージャンはアガることだけが目的ではなく、育てていくことが大切
こんなことを考えながらを切り、手牌は2シャンテンに戻るものの、ツモのリズムに乗っていければ、次のような最終形もあながち夢ではないと思うのです。
を切らないで1シャンテンに進行させた場合は、次のようなテンパイでの即リーチ策が現実となるでしょう。
別段悪くない手牌に見えますが、私はこれらのリーチにはスパイスが効いてない、誰の口にも合わせて作っている料理にしか思えないところがあります。
それでは次の一品はどうでしょうか?
南2局南家、7巡目、9千点ほどプラスしてトップ目に立っています。
1シャンテンだった手牌に安めのを引きテンパイになったわけですが、さてを切ってドラ待ちにするのか、を切ってアガり易そうなシャンポン待ちにするのか、考えどころになります。
場にももまだ顔を見せてない状況であれば、切りシャンポンリーチをかける打ち手も多いのではないでしょうか。
もちろん、リーチをかけた後にドラを引いてきてピンチを招くことに不安を覚えたり、元々ドラ待ちリーチが好きだったりという打ち手は、を横に曲げるのでしょう。
いずれにしても、1シャンテンから0シャンテンになる牌を引いてきたのだから、テンパイに取らない選択肢は無いと考えるのが普通です。
ましてや、今局を含め残り3局でゲームセットする場面でのトップ目ですから、加点して局数をひとつ減らすことが使命と考えるのが普通です。
そのようなことは十分理解したうえで、私はこう考えます。
思考(1) 何故、トップ目なのにド安めのを引いてきたのか?その現実を素直に受け入れてよいものだろうか?
思考(2) 南場に入ってのトップ目には、トップ目にふさわしいエネルギーがあるはず
思考(3) このゲームをもって、マージャンと別れを告げるわけではない
思考(4) アガることも大切だが、チャンス手が来たら、アガれなくてもいいからチャレンジすることが大切
思考(5) ツモは、雀神が自分を試すために7巡目に置いた牌なのではないか
こんなことを考えながら、私はをツモ切りし、手牌を1シャンテンから0シャンテン(テンパイ)に進行させることを自らの手で阻みます。
さすがにチャンタ三色が完成するが場に4枚出ていたらツモを受け入れますが、その際は切りのヤミテンにします。
なぜなら、私の決め事のひとつとして、《安め引きにリーチ無し》というものがあることと、7巡目にして欲しい欲しいが枯れてしまう状況から、迫りくる危機を感じているためです。
安めをツモ切りして、フリテンの高め引き直しを待つ打ち方は、東1・2局の序盤戦やトップ目に立っているときの常套手段です。
シャンテン数を減らさない打ち方プラス、フリテンをわざわざ作るわけですから、危険極まりない選択に見えるでしょうが、もしアガりまで結びつけられたとしたら、かなりスパイスの効いた一品に仕上がることは間違いありません。
このいずれの最終形もリーチと踏み込み、最前線で思いっきり戦ってみたいものです。
また、3枚目や4枚目のが上家から打たれたら、チーして打とし、ドラ待ちではあるものの、トップ目のエネルギーをフル活用した勝負し甲斐のあるテンパイにとります。
シャンテン数を減らすことばかりに精を出したり、1巡でも早くテンパイしたいという思いが強くなったりすると、《近視眼的なマージャン》になってしまいます。
もし、あなたが打っているときに、スケール感や手順の滋味を出してみたいなと思う局を見つけることができたなら、アガりに向かう精度を棄てる勇気を持たれてみてはいかがでしょうか。