- 第8話2020年、娯楽の危機
- 第7話人和が役満になっている謎
- 第6話30倍の法則
- 第5話麻雀って、何が楽しいんですか?
- 第4話弊社の誇りの一つ。品質管理チーム
- 第3話牌の偏り 後編~初期プログラムの失敗
第2話 牌の偏り 前編~確率の偏りとは何か?
前回、コラムを掲載させていただいて以降、非常に沢山の温かいご感想やご声援をいただきました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。多くの応援メッセージをいただき、文章を書くのは苦手な方なのですが、関心を持っていただけるようなコラムを書いていこうと改めて決心いたしました。本当にありがとうございます。
さて、麻雀ゲームを10年以上運営しておりますが、普段、弊社のサポートセンターに、一番多くお問い合わせ頂くことは何だと思われますでしょうか?
色々な形でのご意見やご要望を頂く事があるのですが、圧倒的に多いのは、牌の並びが偏って(かたよって)いるのではないか、というご意見です。あまりにも多くご関心を頂いていますので、これから2回にわたって、麻雀やMaru-Janにおける牌の偏りについて、私の考えをご説明したいと思います。
◆前編 確率の偏りとは何か?
◆後編 牌の偏り、初期プログラムの失敗
今回は、前編として、確率の偏りについてご説明します。これは、サイコロを振る時のことを考えていただくと分かりやすいと思います。
サイコロの目は1から6までですから、それぞれの目の出る確率は、6分の1になります。ですが、実際にサイコロを振ってみると、
のように、3だけが極端に多く出たりします。
のように、それぞれの目が綺麗に1回ずつ出るというのは、むしろ珍しいのです。
もちろん、これを1000回、10000回と続けていきますと、それぞれの目の出る確率はどんどん6分の1に近づいていきますが、たった10回や100回やったぐらいでは、サイコロの出る目は偏ります。サイコロのように6種類しかないものでも偏るぐらいですから、麻雀牌のように34種類もある場合は、より一層、偏った配牌や山になることの方が普通です。
たとえば数牌を12枚取ったときに萬子と筒子と索子の数が綺麗に4枚ずつ、の方が組み合わせとしては珍しく、萬子と筒子ばかりだったり、逆に萬子は1枚だけ、という事が普通という事になります。
ですので、字牌が無いとして数牌だけランダムに並べた場合、
のような配牌もあり得ますし、皆さんもよく遭遇するのではないでしょうか。なんだか悪い配牌のような印象ですが、そのように感じるような配牌は寧ろ当たり前という事になります。ただ、私はこういう配牌でも純チャンや三色、七対子を狙っていければ、意外と楽しく打てるのが麻雀の面白い所だと思っています。麻雀打ちの腕の見せ所という感じがしますね。
反対に私がリアル麻雀で遭遇した親番の配牌ですが、このような配牌もあり得ます。
もう少しで天和です。九を切って高め三色の手でした。しかし、調子に乗ってダブリーしたら、途中で西家の方が五萬を暗槓したため、筋の二萬も出なくなり、なんと流局してしまいました(笑)。(せこくダマが正解だったか~!!)
絶望的に悪い配牌もあれば、このような天国のような配牌もあり、様々な形で配牌に差があり偏っているのが、麻雀の理不尽な所でもあり、とても面白い所でもあると思っています。これは着順についても同じことが言えると思います。
実力が等しいとした4人で麻雀を打った場合、1位になる確率は4分の1ですので25%です。ですので、例えば4半荘の麻雀を打った場合には、1位,3位,4位,2位のように、1回ずつそれぞれの着順になるかというと実際は中々そうはなりません。
ちょっと4半荘打ってみたところ、着順は、4位,4位,2位,3位でした。1位か4位で良いと思うトップラス麻雀を目指す私としては、ラスが多いのはいいとしても、1位が全くないのは、残念な感じです。ただし、麻雀をする人なら誰でも実感している事かと思いますが、4半荘という少ない回数で1位がないというのは、誰にとっても珍しい事ではないですね。
4半荘で1位がない事がどれぐらいあり得るのか、確率を計算してみましょう。
仮に私に平均と同じの麻雀の力があるとした場合、1位から4位までの4種類があるわけですので、1位になる確率は4分の1になりますので、1/4=0.25⇒25%となります。
反対に2位から4位は3種類ありますので、2位から4位になる確率は、4分の3になりますので3/4=0.75⇒75%となります。
これが4回続く確率は、4回かけ算(べき乗)して、0.75^4=0.316..⇒四捨五入して約32%となります。
つまり、4半荘打ってトップが1回も無い確率は約32%もあり、おおよそ3人に1人ぐらいは(3回に1回ぐらいは)そのような少し残念な目にあうという事になります。
また、Maru-Janのサポートには、「最近10半荘近く全くトップをとれない。何か私だけが勝てないようなプログラムにしているのではないか。」という形のご意見を頂くことも多くあります。
私も1位を全くとれない半荘が続くと、まったく同じ気持ちになることもありますので、こちらも確率を計算してみましょう。
仮に10半荘という長い間1回もトップが取れないと、かなり憂鬱な気持ちになりますが、その確率は、先ほどの計算と同じように、75%が連続して10回続く確率になりますので0.75^10=0.0563..⇒約5.6%となります。
約5.6%の確率でそのような悲惨な状況になることになります。20人いれば約1人には起きる(20回試せば1回は起きる)という事ですね。それなりに不運ではありますが、、、
私も麻雀打ちとしては絶対に避けたい状況ですが、平均的な雀力でもこの確率ですので、残念ながら普通に打っていれば十分に起こりうるという事になります。ただし、私がここで言いたいのは、アンラッキーだから仕方がないという事ではなく、私は、これが麻雀の面白さの一つではないのかと思っているという事です。
このように何半荘もトップを取れないというのは、麻雀を長く打っている人は、必ず経験しているものかと思いますが、これがあるからこそ、トップを取れた時や好調時が嬉しいのだと思います。1人用麻雀ゲームで毎回トップを取れていれば、それは嬉しいものにはなりづらい。ですが、仮に10半荘トップが無い後に、トップが取れたときには、何か長いトンネルを抜けたような気持ちになり、普段のトップとは違う味わいがあります。(ビールを我慢し続けた後の一杯のような?)
また、配牌についても同様で、仮にまったく偏りがなく毎回きっちり確率通りに萬子と索子と筒子が同じ数ずつ来る配牌だとしたら、それは面白い麻雀になるでしょうか。もしくは、毎回ダブリーまたはイーシャンテンのような好配牌だと、それは楽しい麻雀となるでしょうか。
いつも悪い配牌と格闘しているからこそ、時に現れる天国のような配牌が光り輝いて見え、心躍るのだと思います。確率の偏りの気まぐれは本当に面白いです。幸運や不運の波に飲み込まれたり、格闘したりするのが、麻雀の醍醐味の一つだと思い、日々、牌と遊んでいます。